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テツドウニホンブンカシコウ
鉄道日本文化史考
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体裁A5判・352頁
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刊行年月2007年04月
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ISBN978-4-7842-1336-8
著者・編者略歴
うだ ただし・・・昭和7(1932)年大阪生.大阪大学(文学部・法学部)卒.同大学経済学部助手を経て追手門学院大学経済学部教授を歴任.平成18(2006)年定年退職。経済学博士(大阪大学).追手門学院大学名誉教授.主著『近代日本と鉄道史の展開』(日本経済評論社、1995).
内容
日本の近代化のなかで陸蒸気=鉄道がもたらしたものは、はかり知れない。本書では「文化の鏡」としての鉄道をとりあげ、知識人の体験や一般人の認識から民俗・観光(巡礼)・教育との関わりを通して、鉄道が日本人の内面的形成に果たした文化的役割を明らかにする。
目次
序章 「文化の鏡」としての鉄道
鉄道文化と近代社会──鉄道日本文化史への試論──
はじめに
一 「文明の利器」・「文化の鏡」
二 「鉄道文化」概念とその歴史的形成
三 日本人の鉄道観の形成とその歴史的特質
四 日本の近代化と鉄道の文化的関与
鉄道再成に向けての文化的再認識──結びにかえて──
第Ⅰ章 鉄道初体験と近代への文化的覚醒
明治初期わが国一知識人による鉄道体験──江本鰐水の日記から──
はじめに
一 江木鰐水の鉄道体験と『地動説』原理感得の契機
二 幕末維新期日本人の鉄道認識とその限界
三 鰐水の鉄道体験の意義と評価
鰐瑞の陰陽連絡交通ルート構想──結びにかえて──
維新政府官僚安場保和の鉄道初体験と日本鉄道会社の設立
はじめに
一 安場保和の鉄道関与と岩倉使節団への参加
二 岩倉使節団の大陸横断鉄道旅行
三 安場保和の実体験的鉄道学習の意義
四 日本鉄道株式会社の計画と出願から創立・開業まで
鉄道国家日本の先蹤者──結びにかえて──
第Ⅱ章 日本人一般の鉄道認識の形成
「陸蒸気」呼称考──「陸運河」としての一面──
はじめに
一 主要辞書に見える「陸蒸気」の語義
二 文明開化期文献に見える鉄道関係語句
三 「蒸気船」と「蒸気車」
四 「陸蒸気」概念の庶民的形成
五 「陸運河」としての鉄道
「車蒸気」のこと──結びにかえて──
明治中期西播地方の鉄道民俗──和辻哲郎少年の体験から──
はじめに
一 和辻哲郎の生立と播但鉄道の開通
二 和辻哲郎少年の鉄道体験
交通民俗の一変容──結びにかえて──
第Ⅲ章 鉄道の発達と伝統文化的契機
本邦鉄道発達の文化的考察──柳田国男の所見を中心に──
はじめに
一 考察の契機と中心的課題
二 鉄道による文化の断絶と連続
(1)在来交通体系・地方文化圏の解体
(2)近代国家的統合に向けての日本人の内面的改造
(3)近世日本人の社会的行動様式の再現
国民的交通需要の構造的特質と鉄道経営──結びにかえて──
わが国の鉄道史と「観光」の理念──巡礼・遊覧・観光──
はじめに
一 わが国の鉄道発達の民俗的特質
二 国有鉄道の行楽輸送重点化戦略
三 国有鉄道の外国人観光客誘致施設
四 「観光」の理念と国内社会の現実
「遊覧」から「観光」へ──結びにかえて──
本邦鉄道事業の成立・発達史に見る伝統文化的構造──日本型「巡礼」交通習俗の近代化──
はじめに
一 前近代日本における国民的旅行文化の形成
二 本邦鉄道事業の特質
三 私鉄経営と社寺参拝・名所周遊
四 都市圏私有電気鉄道の発達
日本人の鉄道願望の民俗的基調──結びにかえて──
第Ⅳ章 国民教育と鉄道の役割
わが国近大教育の進展をささえた鉄道の文化的役割
はじめに
一 近代教育・文化振興と鉄道の役割(文献紹介)
二 学校教育・社会教育用資料・情報と鉄道輸送
三 新聞・図書・雑誌等文化情報の鉄道輸送
四 通学・校外学習用輸送と自主学習機会
内面的近代化の素因としての鉄道──結びにかえて──
近代日本小学校国語教育における「鉄道」教材化の諸相
はじめに
一 わが国「近代化」政策の両輪──教育と鉄道──
二 分類項目と鉄道発明家の人間像
三 鉄道の発達と社会効益
四 鉄道利用体験・沿線所見・車内情景など
歴史過程と鉄道教材──結びにかえて──
第Ⅴ章 地域社会と鉄道・駅
日本の駅──その歴史と再生──
一 律令国家の駅制
二 昔の街道と宿駅
三 街道の駅から鉄道の駅へ
四 無人駅を「故郷の廃屋」にするな
五 鉄道駅による新「公共空間」創造
六 建築文化財としての駅舎の保存
「聖」から「俗」へ──阿賀神社と湖南鉄道太郎坊駅改築一件──
終点の無い鉄道線路──箕面電車の初期軌跡はエンドレス─―
長谷川如是閑の大阪郊外文化論──南海鉄道沿線に住んで──
戦前日本の田園都市開発と電鉄企業――ニュータウン建設の先駆――
初出一覧
あとがき
索引(人名・事項・地名)
紹介媒体
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『日本歴史』718号
2008年3月1日
原田勝正
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紀伊国屋書評空間BOOKLOG
2011年4月30日
辻 泉