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ホウライサントフソウジュ
蓬莱山と扶桑樹
日本文化の古層の探究
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体裁A5判・442頁
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刊行年月2008年08月
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ISBN978-4-7842-1400-6
著者・編者略歴
おかもと・けんいち・・・1937年京都市生まれ.京都大学文学部史学科(国史専攻)卒業.毎日新聞入社.学芸部長・論説委員・特別編集委員を経て、京都学園大学人間文化学部教授.
内容
中国伝来の神仙思想のうち、不老長生の仙境「蓬莱山」のイメージと、生命更新の仙木「扶桑樹」のシンボルが、日本の古代文化におよぼした影響の諸相を、歴史考古学的に明らかにする。
「蓬莱山」と「扶桑樹」は古墳時代を解き明かすうえで二大キーワードであるはずが、なぜか古代史や考古学の分野では、長らく見過ごされてきた。20年前より「前方後円墳=蓬莱山起源」説を提唱してきた、元新聞記者でもある著者の研究集大成。
目次
まえがき ―仏教以前に「仙道」の時代があった―
第Ⅰ部 蓬莱山と扶桑樹の再発見
序 章 日本古代史上の「スフィンクスの謎」
第1章 蓬莱山のかたち ─前方後円墳の起源─
1 前方後円墳の祖型
2 壺のシンボリズム ─神仙鏡─
3 蓬莱山のイメージ
4 壺型古墳は蓬壺だ
5 古墳の中の仙境性
第2章 蓬莱憧憬の展開
1 壺のモデルは何か
2 神仙思想文化の華
苑池/仏教/都城/文芸/美術/楽園の創出/むすび─常世へ─
付 不老長生の夢「蓬莱山」=前方後円墳に託して
第3章 扶桑樹のすがた ―冠と壁画の図像学―
はじめに―構内の桑との対話―
1 扶桑樹のイメージ
漢籍史料にみえる扶桑樹/画像資料にみえる扶桑樹/高句麗壁画の中の扶桑樹
2 考古資料の扶桑樹
藤ノ木古墳の金銅冠/珍敷塚壁画の蕨手文
3 蕨手文の型式分類
蕨手文の分類/羊角型蕨手文―五郎山古墳例/蕨手文の位置とセットになる図文
4 双脚輪状文を解く
先行の諸説/私見―太陽鳥起源説
第4章 扶桑憧憬の諸相
1 五郎山古墳壁画の主題
従来の解釈/「射日神話」の発見/「招日神話」の発見
2 竹原古墳壁画新解 ─『楚辞』の神仙世界
3 扶桑唐草文の世界
中国古代瓦当の扶桑樹/日本古代の扶桑樹(管見)
4 「飛ぶ鳥の明日香」
が飛ぶ─私見/結論
付 「しきしまの」と「ももしきの」 ─仙境の表象─
結 章 「文物の儀、備はる」 ―「国のかたち」の形成―
第Ⅱ部 不老長寿の楽園を求めて
第5章 卑弥呼の最期と昇仙
はじめに ―『魏志倭人伝』の「以死」をめぐって―
1 「卑弥呼以死」の真相
「以死」の解釈/「王殺し」説の登場/「王殺し」への賛否
2 中国正史にみる用例
鯀の治水と最期/中国史書の「以死」
3 日本古典にみる「以死」
4 孫権と卑弥呼の場合 ―内藤湖南説の再検討―
むすび ―卑弥呼、箸墓より昇仙す―
崇神の時代と箸墓の年代/古墳時代開始の実年代/「卑弥呼以死」からのアプローチ
第6章 雄略時代の神仙信仰
1 稲荷山鉄剣銘の発見
金文顕現/「百年に一度」の大事件/波紋を呼んだ記事
2 乎獲居臣八代の系譜
一一五文字の解読/和習と漢文志向
3 「獲加多支鹵」の由来
出典は名作「西京賦」か/「西京賦」と倭王武の「上表 文」/和風諡号の意味/古代の文明開化期・雄略朝
4 「杖刀と典曹」の典拠
杖刀人首/「左治天下」の解釈/典曹人/椿井大塚山古墳の被葬者も「典曹人」?/五世紀の「英雄」から六世紀の「官僚」へ/欽明天皇か崇峻天皇かもしれない
コラム1 『文選』
コラム2 倭王武の上表文
コラム3 画文帯神獣鏡の分布
コラム4 「治天下」の宣言 ─発見25年記念シンポジウムから
第7章 高松塚の主石上麻呂
1 「高松塚壁画顕現す」
発見と報道/被葬者候補
2 左大臣の数奇な生涯
経歴/行蔵
3 古代史にみる君臣観
古代日本/古代世界
4 万葉歌にみる人間像
「石上麻呂歌群」の再構/『竹取物語』の石上麿足
5 「高光る藤原京の春」
「藤原京の平和」/王陵直列の発見
コラム 高松塚解体 ―慟哭する壁画と墓主―
第8章 蓬莱を尋ねた人びと
1 浦島子の行方は何処 ―張騫の尋源伝説と比較して―
古代浦島子伝説/天の川の蓬莱山/張騫の乗槎伝説/日本の乗槎伝説/浦島伝説の真実
2 田道間守の非時香菓 ―「卑弥呼の鏡」とつがえて―
伝承の田道間守/伝承に隠る史実/鏡背の笠松形は/遣唐使のルート
3 大加羅人と波斯人と ―アレクサンダー伝説の東漸―
「額に角ある王子」来たる/アレクサンダー伝説群/日本神話伝説との比較/飛鳥に来たペルシア人
あとがき/索引(人名・件名)
紹介媒体
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毎日新聞
2008年10月5日
張 競
今週の本棚
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『古代文化』第576号
2009年6月30日
森岡秀人
紹介