思文閣銀座では、昨年8月から新たにキュレーターの展覧会 『Ginza Curator’s Room』を
スタートさせました。
本企画では、毎回ゲストキュレーターを迎え、彼らの目を通して新たな魅力と価値が吹き込まれた“部屋”を展観します。
第3回目となる本展では、森美術館アジャンクト・キュレーターであるマーティン・ゲルマン氏のキュレーションにより、ベルギー出身のカスパー・ボスマンス氏の作品を、日本で初めてご紹介いたします。
Ginza Curator’s Room
https://www.shibunkaku.co.jp/event/gcr3/
Ginza Curator’s Room #003
Martin Germann with Kasper Bosmans
『Beyond Fish』
Ginza Curator’s Room #003 Martin Germann with Kasper Bosmans 『Beyond Fish』
思文閣 銀座
10:00‐18:00
日曜休廊
〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目3番12号 壹番館ビルディング
地図<Google Maps>
OPEN 10:00 — CLOSE 18:00
キュレーターからのメッセージ
マーティン・ゲルマン
ベルギーのカスパー・ボスマンス(1990年、ベルギー・ロンメル生まれ)にとってアートとは、彼自身が語る通り「学習のツール」である。彼は、人々がノートを使うような感覚で絵画を使用する。特に、彼が2013年から制作を続けている小型で持ち運びやすい木製パネルのペイント・シリーズ《レジェンド》においては、その傾向が顕著である。《レジェンド》は今日まで、ボスマンスが当時使用していたスキャナーの大きさで描かれている。これらは作品に添えられる説明文の代わりとして、意図的に制作されたものであった。これによって作品は、20世紀の「イズム」が分解され、人類学、歴史学、政治学といったあらゆる文脈において、アートの役割が模索されている今日という時代––––緊急の気候危機に対する目覚めの中で、自然科学や忘れ去られた先住民の知識が、現代美術を、修正や新たなつながりの、そして未来への物語の道具として扱うための材料を提供している時代––––に呼応しているのである。
古来の紋章から現代の技術的な手話まで、膨大な視覚的コードを組み合わせた《レジェンド》は、ボスマンスの実践を通じて紡ぎだされる楽しげな線描であると言える。一方では物質的で手触りがよく、他方ではアマチュア的で作家性がないようにさえ見えるこれらの作品は、作家が関心を持つあらゆる研究分野を捉え、解読して、そこに溶け込むことができる。ボスマンスは、Ginza Curator‘s Room #003への招聘を受けて、思文閣のコレクションから生き物をテーマとする作品数点を選び、その起源となる特定の文脈を反映しながら、自身の故郷ネーデルラントの西洋絵画の伝統と組み合わせる。この文化を越えた枠組みの中で作家は一連の新作を制作し、それらを、持ち運び可能な彼の既存の立体作品とともに展示する。