会期中無休
三嶋りつ惠 WAN
思文閣銀座
OPEN 10:00 — CLOSE 18:00
今回、彼女が茶碗を創ったのは、ある意味自然な成り行きだったかもしれない。
三嶋りつ惠は、ヨーロッパを中心に、さまざまなガラス作品で、私を含め多くの人を魅了し続けている。
彼女の作品は、与えられた場所において、あらゆる光を包みこみ、その空間に命をさずけ、観る者みなに感動をもたらす。
しかし、私は飽きたらず、光を独り占めしたいと思った。
自分だけが手に触れられる光……。
やがて、皿、花入、棗、水指となって輝きを放った。
そしてこの度の、茶碗にたどり着いた。
したたるような茶の緑を、光のガラスで、掬うように味わいたい。
ついに私だけの光を、この掌におさめることができるのだ。
ヴェネツィアで作られた茶碗は、
あたりの光を反射してきらめき、まるで光の結晶のよう。
木で挽いたものを「椀」、土でひねったものを「碗」と書くが、
どれにも当てはまらない三嶋りつ惠の作品を、
私は光り輝く「」と表すことにした。
個展を開く思文閣銀座は、彼女に参加を願って構想を出し合い、
昨年、建築家の木村優氏に手掛けてもらった。
新しい美の空間で、
三嶋りつ惠の織りなす光の世界を、ぜひ堪能していただきたい。
思文閣 田中 大
作家プロフィール
1962年京都生まれ。
1982年からスタイリストとして活躍、
1985年からは花を素材としたインスタレーション作品を制作するようになった。
1989年にイタリア・ヴェネツィアに移住。
1996年ムラーノ島にてガラスと出逢い、制作活動を開始。
ムラーノ島の熟練した職人達とのコラボレーションによって、ガラスの可能性を追求した有機的なフォルムを作り上げている。
千年の伝統技術と三嶋の自由な感性の融合から生まれた無色透明なガラスは、光を透すことで新たな魅力を放っている。
作品制作だけにとどまらず、温室や教会などの空間にガラス作品を置くインスタレーションによって「次に見えてくるもの」を見据えた表現を続けているのも三嶋の特徴である。
これまで、ミラノ、ロンドン、ロッテルダム、東京、京都、ブリュッセル、ベルリン、サンフランシスコなどで展覧会を開催。