山上新平写真展 Echoes of Unseen

  • 山上新平写真展 Echoes of Unseen
  • 山上新平写真展 Echoes of Unseen

この度、思文閣では新進気鋭の写真家、山上新平の個展「Echoes of Unseen」を開催いたします。二回目となる今回は、作家初の試みとなる大判サイズの作品のみを展観いたします。
 
山上氏は、SAGA HOUSEに滞在しながら厳冬の嵯峨に身を置き、目に見えない何かを捉えようと試みました。その結果生まれた作品からは、作家が心の奥底で鮮烈に感じたもの、そして観る者に深く共鳴し、神羅万象に宿る命の息遣いを感じることができます。
 
2月はSAGA HOUSEを会場とした完全予約制での展示、4月には思文閣銀座に巡回いたします。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。
 
 
SAGA HOUSE 
2025年2月14日(金)〜22日(土)日曜休廊
11:00 – 17:00 完全予約制
来場ご予約はこちらから
 
思文閣銀座
2025年4月18日(金)〜26日(土)日曜休廊
10:00 – 18:00 予約不要
 
 
 
ぼくは嵯峨ほど寒い場所を知らない
 
気象的に寒いのではない
 
心的に寒いのだ
 
雪降る厳寒の季節がその純度を高める
 
静謐で異質な重力が心に去来する時、命が震えを覚える
 
その磁場に宿る得体の知れない何かが心の温度を奪ってゆく
 
山々には人間の感情を煮詰めたような音が轟き続け
 
長い時の中で精製された霊魂がいまだ生きている事実を知る
 
一体、自分は何を見ているのか、何を感受しているのか
 
嵯峨の生が魅せるのか、嵯峨の死が魅せるのか
 
その異界へ足を踏みゆくとき、自分が何者かわからなくなり
 
発狂と鎮魂の狭間で震えながらシャッターを一枚切る
 
人の体温がこれほど欲しいと思ったことはない
 
誰かの体温に温まっていたいと思える自分にどこかで安堵さえする
 
その写真たちはほとんどがブレていた
 
その震えは寒かったからではない
 
見えざるものへの畏敬の念がそうさせたのだ
 
ぼくはそう信じた時、やっと大きく息を一つ吐いた
 
山上新平