内容

古絵図研究20年の著者が、元徳本祇園社絵図、社寺参詣曼陀羅図、関ヶ原合戦図、高山寺・善妙寺領[ボウ]示絵図などを題材に古絵図を論じ、鞍馬寺、花背別所、大道寺、北野天満宮などの経塚や大日寺、法金剛院、飯盛山などの瓦塚の研究から埋塚を論じる。更に懸仏の検討を通して御正躰論を展開する。中世社会に生きた人々の夢に想いを馳せる力作である。

目次

序章 交差する「歴史」と「美術」-中世考古美術の研究-
 一 古絵図研究20年の軌跡
 二 古絵図と後世の書き込み
 三 山王宮曼荼羅と御正体の世界


第一章 古絵図論

元徳本祗園社絵図考
 一 祗園社絵図の諸本
 二 文政本・明治本と元徳本
 三 元徳本の問題点
 四 元徳本の筆者とその周辺

社寺参詣曼荼羅図の成立と展開
 一 その前史
 二 社寺参詣曼荼羅図の諸相

社寺参詣曼荼羅図の世界
 一 絵解きと参詣曼荼羅図
 二 御師と先達
 三 社寺参詣曼荼羅図の特徴
 四 那智参詣曼荼羅図の画面構成
 五 長命寺参詣曼荼羅図と縁起
 六 社寺参詣曼荼羅図の筆者と工房
 七 狩野派と制作年代

社寺参詣と飲茶風俗
 一 社寺参詣曼荼羅図の成立と展開
 二 社寺参詣曼荼羅図にみる飲茶の諸例

新出の関ヶ原合戦図
 一 関ヶ原合戦の経緯
 二 絵画化された関ヶ原合戦図

埋経研究と社寺境内絵図-京都・神童寺絵図をめぐって-
 一 神童寺と古絵図
 二 古絵図に描かれた「塔」
 三 「塔」と埋経

荘園絵図の歴史的性格
 一 荘園絵図の成立-神護寺領を中心に-
 二 堺相論と絵図
 三 和与・下地中分と絵図

[補論]絵図に見る竹生島

高山寺・善妙寺寺領?示絵図
 一 墨書の解釈
 二 ?示打ちの経過
 三 描かれた社寺景観

古絵図と経塚研究
 一 文献と地上の標識
 二 社寺絵図に描かれた経塚
 三 古絵図研究とその課題


第二章 埋経論(Ⅰ)

埋経にかけた父と女-平安人の遙かなる夢-
 一 父道長の埋経
 二 女彰子の埋経
 三 そして、平安人の夢

金峯山詣と「京都文化」
 一 道長とその一族
 二 伝来と作行

鞍馬寺経塚出土の押出仏
 一 伴出品の諸相
 二 鞍馬寺と押出仏

[補論]押出仏について
 一 押出仏の概要
 二 その品質・形状

京都・花背別所経塚群の経筒と紙本経
 一 発見の状況
 二 経塚の構造と遺物の概要
 三 紙本経の保存修理とその結果

京都・福知山市大道寺経塚出土紙本経の保存修理とその問題点
 一 保存修理前の問題点
 二 保存修理中の問題点
 三 保存修理後の問題点

京都・福知山市大道寺経塚出土紙本経の保存修理とその意義
 一 保存修理の工程 
 二 埋納紙本経の現状

京都・北野天満宮境内の経塚
 一 出土遺物の概要
 二 出土地の位置
 三 北野参詣曼荼羅図と野外遊楽図
 四 東福寺山内の石造五輪塔

石造美術にみる鞍馬山経塚群
 一 鞍馬山経塚の実態
 二 鞍馬山の四周を取りまく経塚

京都・浄土寺南田町経塚と済助
 一 遺址
 二 遺物
 三 経典の種類と奥書の銘文

埋経の山・写経の心-鞍馬山からのメッセージ-
 一 重怡と信俊
 二 埋経と鞍馬寺

正嘉銘の鞍馬寺銅燈籠
 一 銅燈籠の品質と形状
 二 火袋の人物名をめぐって
 三 文応元年銘銅板扉との関係


第三章 埋経論(Ⅱ)

瓦経とその時代
 一 瓦経の出土例
 二 年記銘瓦経と地域

瓦経の規格性-大日寺と小町塚の瓦経を例として-
 一 大日寺瓦経としての復原
 二 小町塚瓦経の特徴
 三 硯になった瓦経

瓦経片の復原的研究
 一 経文の復原とその出土地
 二 瓦経の規格と出土地
 三 従来の今熊野瓦経の研究史

瓦経片の復原的考察-常楽寺美術館蔵を例として-
 一 飯盛山瓦経としての復原
 二 小町塚瓦経としての復原

伝鳥取・大日寺出土の瓦経
 一 従来の研究史
 二 経典の種類と経文の復原(一)
 三 経典の種類と経文の復原(二)
 四 経典の種類と経文の復原(三)
 五 経典の種類と経文の復原(四)
 六 胎蔵界曼荼羅の復原
 七 大日寺瓦経としての特徴

[補論]シーボルトが持ち帰った瓦経片-「瓦経片の世界」その後-

瓦経十七片について-小町塚瓦塚資料-

京都・法金剛院付近出土の瓦経
 一 京都市内発見の瓦経
 二 従来の研究史
 三 法金剛院瓦経の出土個数

福岡・飯盛山瓦経の復原


第四章 御正体論

「名山霊寺」と御正体
 一 金峯山の御正体
 二 鞍馬山の御正体
 三 那智山・槇尾山・朝熊山の御正体

御正体の作行と伝来
 一 新出の御正体の初見(一)
 二 新出の御正体の初見(二)

「寺中静謐」の懸仏
 一 熊野若王子神社伝来の懸仏
 二 峯定寺伝来の懸仏

[補論]生活文化からみた懸仏

年記銘懸仏の諸相
 一 年記銘懸仏の諸例
 二 香取神宮伝来の懸仏
 三 長谷寺伝来の懸仏

懸仏とその銘文をめぐって
 一 金銅山王十社懸仏(奈良国立博物館蔵)
 二 金銅天手観音像懸仏(山形・個人蔵)
 三 金銅不動明王像懸仏(大阪・個人蔵)
 四 金銅薬師三尊像懸仏(奈良・霊山寺蔵)
 五 金銅阿弥陀三尊像懸仏(京都国立博物館蔵)

秘伝の本尊と懸仏-奈良・霊山寺を一例として-
 一 制作の背景
 二 本尊礼拝形式の変化

葛川住民と懸仏
 一 葛川の歴史的環境
 二 懸仏の品質・形状と墨書銘
 三 願主・奉加者らの系譜

もう一つの不動明王像懸仏
 一 品質・形状
 二 伝来と人物の系譜


成稿一覧
掲載参考図版一覧
あとがき
索引

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