古絵図研究20年の著者が、元徳本祇園社絵図、社寺参詣曼陀羅図、関ヶ原合戦図、高山寺・善妙寺領[ボウ]示絵図などを題材に古絵図を論じ、鞍馬寺、花背別所、大道寺、北野天満宮などの経塚や大日寺、法金剛院、飯盛山などの瓦塚の研究から埋塚を論じる。更に懸仏の検討を通して御正躰論を展開する。中世社会に生きた人々の夢に想いを馳せる力作である。
チュウセイコウコビジュツトシャカイ
中世考古美術と社会
-
体裁A5判・556頁
-
刊行年月1991年07月
-
ISBN4784206493
内容
目次
序章 交差する「歴史」と「美術」-中世考古美術の研究-
一 古絵図研究20年の軌跡
二 古絵図と後世の書き込み
三 山王宮曼荼羅と御正体の世界
第一章 古絵図論
元徳本祗園社絵図考
一 祗園社絵図の諸本
二 文政本・明治本と元徳本
三 元徳本の問題点
四 元徳本の筆者とその周辺
社寺参詣曼荼羅図の成立と展開
一 その前史
二 社寺参詣曼荼羅図の諸相
社寺参詣曼荼羅図の世界
一 絵解きと参詣曼荼羅図
二 御師と先達
三 社寺参詣曼荼羅図の特徴
四 那智参詣曼荼羅図の画面構成
五 長命寺参詣曼荼羅図と縁起
六 社寺参詣曼荼羅図の筆者と工房
七 狩野派と制作年代
社寺参詣と飲茶風俗
一 社寺参詣曼荼羅図の成立と展開
二 社寺参詣曼荼羅図にみる飲茶の諸例
新出の関ヶ原合戦図
一 関ヶ原合戦の経緯
二 絵画化された関ヶ原合戦図
埋経研究と社寺境内絵図-京都・神童寺絵図をめぐって-
一 神童寺と古絵図
二 古絵図に描かれた「塔」
三 「塔」と埋経
荘園絵図の歴史的性格
一 荘園絵図の成立-神護寺領を中心に-
二 堺相論と絵図
三 和与・下地中分と絵図
[補論]絵図に見る竹生島
高山寺・善妙寺寺領?示絵図
一 墨書の解釈
二 ?示打ちの経過
三 描かれた社寺景観
古絵図と経塚研究
一 文献と地上の標識
二 社寺絵図に描かれた経塚
三 古絵図研究とその課題
第二章 埋経論(Ⅰ)
埋経にかけた父と女-平安人の遙かなる夢-
一 父道長の埋経
二 女彰子の埋経
三 そして、平安人の夢
金峯山詣と「京都文化」
一 道長とその一族
二 伝来と作行
鞍馬寺経塚出土の押出仏
一 伴出品の諸相
二 鞍馬寺と押出仏
[補論]押出仏について
一 押出仏の概要
二 その品質・形状
京都・花背別所経塚群の経筒と紙本経
一 発見の状況
二 経塚の構造と遺物の概要
三 紙本経の保存修理とその結果
京都・福知山市大道寺経塚出土紙本経の保存修理とその問題点
一 保存修理前の問題点
二 保存修理中の問題点
三 保存修理後の問題点
京都・福知山市大道寺経塚出土紙本経の保存修理とその意義
一 保存修理の工程
二 埋納紙本経の現状
京都・北野天満宮境内の経塚
一 出土遺物の概要
二 出土地の位置
三 北野参詣曼荼羅図と野外遊楽図
四 東福寺山内の石造五輪塔
石造美術にみる鞍馬山経塚群
一 鞍馬山経塚の実態
二 鞍馬山の四周を取りまく経塚
京都・浄土寺南田町経塚と済助
一 遺址
二 遺物
三 経典の種類と奥書の銘文
埋経の山・写経の心-鞍馬山からのメッセージ-
一 重怡と信俊
二 埋経と鞍馬寺
正嘉銘の鞍馬寺銅燈籠
一 銅燈籠の品質と形状
二 火袋の人物名をめぐって
三 文応元年銘銅板扉との関係
第三章 埋経論(Ⅱ)
瓦経とその時代
一 瓦経の出土例
二 年記銘瓦経と地域
瓦経の規格性-大日寺と小町塚の瓦経を例として-
一 大日寺瓦経としての復原
二 小町塚瓦経の特徴
三 硯になった瓦経
瓦経片の復原的研究
一 経文の復原とその出土地
二 瓦経の規格と出土地
三 従来の今熊野瓦経の研究史
瓦経片の復原的考察-常楽寺美術館蔵を例として-
一 飯盛山瓦経としての復原
二 小町塚瓦経としての復原
伝鳥取・大日寺出土の瓦経
一 従来の研究史
二 経典の種類と経文の復原(一)
三 経典の種類と経文の復原(二)
四 経典の種類と経文の復原(三)
五 経典の種類と経文の復原(四)
六 胎蔵界曼荼羅の復原
七 大日寺瓦経としての特徴
[補論]シーボルトが持ち帰った瓦経片-「瓦経片の世界」その後-
瓦経十七片について-小町塚瓦塚資料-
京都・法金剛院付近出土の瓦経
一 京都市内発見の瓦経
二 従来の研究史
三 法金剛院瓦経の出土個数
福岡・飯盛山瓦経の復原
第四章 御正体論
「名山霊寺」と御正体
一 金峯山の御正体
二 鞍馬山の御正体
三 那智山・槇尾山・朝熊山の御正体
御正体の作行と伝来
一 新出の御正体の初見(一)
二 新出の御正体の初見(二)
「寺中静謐」の懸仏
一 熊野若王子神社伝来の懸仏
二 峯定寺伝来の懸仏
[補論]生活文化からみた懸仏
年記銘懸仏の諸相
一 年記銘懸仏の諸例
二 香取神宮伝来の懸仏
三 長谷寺伝来の懸仏
懸仏とその銘文をめぐって
一 金銅山王十社懸仏(奈良国立博物館蔵)
二 金銅天手観音像懸仏(山形・個人蔵)
三 金銅不動明王像懸仏(大阪・個人蔵)
四 金銅薬師三尊像懸仏(奈良・霊山寺蔵)
五 金銅阿弥陀三尊像懸仏(京都国立博物館蔵)
秘伝の本尊と懸仏-奈良・霊山寺を一例として-
一 制作の背景
二 本尊礼拝形式の変化
葛川住民と懸仏
一 葛川の歴史的環境
二 懸仏の品質・形状と墨書銘
三 願主・奉加者らの系譜
もう一つの不動明王像懸仏
一 品質・形状
二 伝来と人物の系譜
成稿一覧
掲載参考図版一覧
あとがき
索引