内容

沖縄県宮古島狩俣集落における伝統的祭祀歌謡(神歌)の永年のフィールドワークをもとに、歌われる歌の諸表現が、その都度どのように生み出され、それが演唱者や社会によってどのように意味づけられてゆくのか。歌詞のみによらない新たな歌謡分析の方法を提示した意欲的な一書。

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本書は、歌われている歌を対象に、そこから「神歌のかたち」 -神歌が神歌として成り立つための条件- を取り出すことを試みるものである。神歌を歌う人が、最低限なにを知っていなければならないかということを考えてみた書である。神歌の担い手たちは、「神歌のかたち」について語ることばを持っている。そして、それを用いて、神歌を歌っている。神歌の歌い手の方々から私が学んだことを、音楽とことばとの関係の一側面を明らかにするために、「神歌のかたち」という観点からまとめてみたのが本書である。(「はじめに」より)

目次

序章  集落の概要/記録に残る集落/研究史/論文の構成/フィールドワークの経過  

第1章 神をまつる人たち
神の司祭=サスたち サス以外の神役 神役選出の方法 サスとヤーキザス ムヌス カンカカリャ  

第2章 神歌をならう  サスにえらばれる 最初はこわい なにも聞かない/なにも知らない 聞いてもわからない 口から口へ 神の帳面 先輩不在 十年かかる サスを卒業する  

第3章 神の名 初めての神歌 神々の名 入れるものと抜くもの 返事する ならわない神歌

第4章 神の座敷 サスが先唱するピャーシ 根口声 祭儀の手続きと祈願内容をよむ

第5章 神の思い タービと歴史 芭蕉布の神衣 ンマヌカンの<根口声> ンマヌカンの<ヤーキャー声> 「私」とはだれか ヤマヌフシライィ 「思い」をよむ

第6章 やわらいであれ ウヤーンのまつり やわらいであれ、百の神よ 低い声 ウヤーンたち ウヤーンの起源譚 私は根立て主である 井戸を探す 神歌と神話 フサをよみわたす ウヤンマからマツメガへ

第7章 神歌のかたち 二元的対称性 定形詞章部の名としての「声」 旋律の名としての「声」 「声」による想起 男と女 ジャンルの区分

終章 神歌の伝承と変容 ひとつの追加 神歌の継承 神の声はふた声 入れるものと抜くもの 声を変える かたちの連なりがいうこと

添付資料 歌詞資料(1~9) 
主要語句解説・索引 語り手の生年 宮古郡各村別士族・平民人口比率

紹介媒体

  • 読書人

    2000年5月26日

    酒井正子

  • 宗教研究328号(75巻1輯)

    2001年

    日本宗教学会

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