房総地方には風雅の歴史がないとの通説があるが、平安時代には京都の堂上公卿や寺社の荘園を通た中央との交流、鎌倉時代には鎌倉五山を中心とする禅宗文化の開花、鎌倉新仏教の興隆など常に風雅の世界に中にあった。江戸時代には房総在住の徳川氏・松平氏など大名を中心とした茶の湯文化があった。
房総における茶の湯をめぐる受容と継承の文化史的なさまざまな交流を中心として、諸学芸の風雅をも紹介し地域文化史を試みた一書。
関連書籍
ボウソウフウガシ
房総風雅史
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体裁A5・700頁
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刊行年月2003年12月
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ISBN4784211713
内容
目次
【古代・中世】
房総千葉氏一族からの風雅―平氏から源氏への転換―
平忠常の乱での源氏の恩情―荘園の中からの豪族千葉氏―
千葉氏と妙見信仰―蓮池伝承と地名のおこり―
藤原定家の下総三崎荘―荘園を介しての堂上公卿との接触―
「古今伝授」を伝えた美濃東氏―千葉氏一族の東氏の風雅―
熊野荘園と熊野信仰の伝播―房総と紀州のかかわりの源流―
鎌倉からの仏教文化と茶の将来―鎌倉幕府の政権基盤としての房総―
南北朝に分かれた千葉氏―東氏からの五山僧の輩出―
日蓮上人生誕の地―日蓮宗の全国への広がり―
幕府御用絵師狩野正信の出自―夷隅上総狩野氏の法華文化―
千葉氏一族の臼井氏と原氏の文化―臼井城から龍沢山大巌寺まで―
宋風文化へのあこがれ―房総各地の名勝八景―
クラカケ衆と小西衆の猿楽集団―房総からの中世芸能の展開―
東京国立博物館蔵「青磁朝寝髮香爐」―上総介織田信長と「茶の湯御政道」―
結城合戦から小田原落城まで―千葉氏一族の滅亡―
清和源氏安房里見氏と千利休―戦国武将の茶の湯の風雅―
【近世―その1―】
房総八十万石の徳川支配―徳川・松平氏の風雅―
『松平家忠日記』にみる茶の湯と連歌―下総上代藩主の風雅―
徳川将軍上総国東金放鷹―房総に残る家康風雅の余香―
土井大炊頭家の茶の湯―下総佐倉藩から古河藩まで―
「式正織部流茶道」―千葉県無形文化財の武家茶道―
茶の湯御政道と数寄屋御成―房総大名の茶の湯への参画―
関宿藩主板倉重宗と寛永文化―房総にかかわる大名の風雅―
武将信仰の石清水八幡宮―「松花堂」を保存した佐倉塚本家―
永井信濃守尚政の茶の湯―上総閏井戸から淀城の閑居まで―
小堀遠州の茶会に出た人々―茶の湯を嗜んだ房総の大名・旗本―
下総国生実藩と千葉南部の文化―遠州に遺書を残した森川出羽守―
上総国久留里藩と「土屋蔵帳」―上総武田氏から土浦藩土屋家まで―
佐倉藩堀田家の茶の湯(その1)―紀貫之の風雅を伝える房総大名家―
堺豪商の茶の湯への憧憬―佐倉藩主稲葉正往と『天王寺屋会記』―
臨済宗大徳寺派の法王山万満寺―後北条氏の房総への新出への手掛かり―
日本文化の底流にある法華文化―下総法華経寺に分墓のある本阿弥光悦―
京都本法寺と千宗旦の侘び茶―房総の法華宗と叡昌山本法寺―
金森宗和と加賀の茶の湯―正中山法華経寺の五重塔と加賀前田家―
隅田川流しの風流―下総と武蔵をつなぐ両国橋―
鎖国下の新しい黄檗文化―房総一の「椿の海」干拓事業―
佐倉藩堀田家の茶の湯(その2)―上野介正信から大老正俊まで―
大喜多藩主松平肥前守とは誰か―茶入「初花肩衝」の柳営返還の謎―
【近世―その2―】
徳川支配後期の風雅―房総地方の展開―
徳川光圀の水戸黄門漫遊記―『甲寅紀行』にみる房総観察の旅路―
市川団十郎と成田山新勝寺―上総介平将門の乱を鎮めた不動明王―
江戸名所地誌案内『江戸総鹿子』―上総保田出身の挿絵師菱川師宣―
徂徠・白石から平田篤胤まで―房総における儒学と国学―
青木昆陽と団茶考―下総に普及した甘藷栽培―
佐倉藩主松平乗邑と『三冊名物記』―大給松平家の風雅―
佐倉藩主堀田家の茶の湯(その3)―相模守正亮の「中興名物」蒐集の謎―
銚子醤油醸造業と「木之国会」―紀州海民の房総への旅網―
木綿文化をとりもった干鰯業―房総九十九里と伊勢木綿商人―
赤松宗旦と小林一茶―『利根川図志』と地方の広がり―
安房勝山藩主酒井氏の茶の湯―房総の左衛門尉家と雅楽頭家―
将軍家茶道の諸藩儀礼への普及―石州流を媒体伝承した房総の武家―
関宿藩主久世大和守家の風雅―房総大名屋敷の遺構・深川清澄庭園―
江戸千家川上不伯の茶の湯―上総大喜多の猪狩へ招かれた不白―
不白による「七事式」と妙見信仰―将門の蓮阿弥陀仏と千家供養―
松ヶ岡・竹ヶ岡・梅ヶ丘陣屋の風雅―房総の海防を巡視した松平定信楽翁―
江戸琳派を興した酒井抱一―佐倉藩主松平乗邑の曽孫―
松平不昧第四女幾千姫の輿入れ―佐倉藩城下町の御用達商舗―
佐倉藩主堀田家の茶の湯(その4)―幕末の西欧化の中で―
尊攘派梁川星巌と鱸松塘―幕末の房総を遊歴した漢詩人―
幕末の風雲を告げる茶会―多古久松松平家と井伊直弼―
歌は河東に茶は宗〓(ヘン)―房総における宗〓(ヘン)流の広がり―
浜松藩主井上家と国友鉄砲鍛冶―徳川家移封と駿河七藩の房総編入―
【近・現代】
幕末から戦後社会まで―東京文化圏に組み込まれた千葉県―
明治維新と房総の近代化―新しい教育と文化の流入―
プリンス徳川昭武と渋沢栄一―松戸徳川家の戸定館―
堀田家の上級武家屋敷遺構―世田谷豪徳寺書院と鏑木台の新邸―
佐倉藩主堀田家の茶の湯道具入札―昭和まで残った将軍家よりの拝領品―
伏見宮別邸の瑞鶴荘―銚子犬吠埼の別荘地―
県指定名勝高梨家住宅の庭園―房総に残る親鸞上人の遺徳―
鈍翁と耳庵の茶友松山吟松庵―安房保田からの海を越える景仰―
茶匠式守蝸牛と釜博士瀬川昌耆―近代数寄者の房総への影―
香取秀真の茶の湯釜―根岸短歌会から伊藤左千夫の釣香爐まで―
歌人伊藤左千夫の茶の湯生涯―成東町歴史民俗資料館の「唯真閣」―
『馬酔木』から『阿羅々木』へ―上総武杉と「アララギ」―
佐倉と久留里の茶の湯炭―鎌倉と江戸への燃料供給地―
明治期における房総茶業の発展―地名に残る茶業の歴史―
房総からの「風雅のが流れ」―終辞にかえて―
【付録資料】
生実藩森川家文書「御茶器目録」(抄)
佐倉藩堀田家文書「諸御道具御茶器元帳」(抄)
関係系譜
小堀遠州から松平不昧までの名物記の流れ
索引