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現代医療の原点を探る

百年前の雑誌「医談」から

前田久美江 編著

  • 体裁
    四六判・312頁
  • 刊行年月
    2004年05月
  • ISBN
    4784211934

内容

明治26年創刊、同41年に廃刊された私立奨進医会の機関紙『医談』は、近代医療制度が確立していく過程における医学界を垣間見る貴重な史料である。本書は『医談』の記事の抄録で構成し、江戸から明治にかけての時代に、日本の医療事情や教育環境がどんな状況であったか、その中にあって医師がどう行動し、何を考えていたかを浮かび上がらせる。

目次

現代版「医談」によせて(酒井シヅ)

はじめに

第1部 明治時代の話

 1 変わりゆく医学
薬物工業学の発展を願う/脳脊髄病研究室の新設を望む/国会医学の意義/細菌学は内科医の領域を侵すか/帝国医科大学病院の改正案/中央看護法講習所設立の趣旨/和漢古医学講義開設の建言/和漢医道を如何に継続させるか/医薬分業より疾病保険法を

 2 新しい病院・医師
医人道義学について/医風の改良について/将来の医学生および父兄に告ぐ/医師の教育/開業医に必要な特性/理想的病院を目指す中原氏/奔流の中の開業医/今や医者も商売だ/助手医免状は是か非か/永楽病院の患者心得 
  〔洋書紹介〕『一老医の少年追想録』『医家雑記』/留学便り/翻訳書が読みにくい
 
 3 伝染病
韓国ペスト研究隊/ペスト病原取調べについて/ペスト菌の侵入経路について/コレラ菌発見が先決か/コレラ医者の名で中傷/開業医は血  清治療できないか/アメリカの小学校巡回医/赤痢の予防法/水災後の衛生上の注意/顕微鏡を過信するな/顕微鏡をもてあます医者/地方自治体と伝染病予防/大日本私立衛生会の沿革

 4 日清戦争・外地
傷病軍人の医療態勢/軍夫救護会設立のこと/赤十字の救護事業をたたえる/検疫殉職者の記念碑を/石黒軍医総監の引退の辞/台湾からの医事通信/アヘン厳禁には三徳あり/広東地方の医療事情

 5 さまざまな医話
藍綬褒章一号と二号/医人の生活は苦しい/遺体解剖規則違反のこと/前野良沢先生の正四位を祝う/「けいあん」の元祖/藪医者の得意技/得意にも失意にも動揺すべからず/強欲の医師/薬価不納者を許さず/肺腑が自ら語ったら/高等医師の遇・不運/施療すれど感涙なし/死してなお学を忘れざる女医/近頃にも任医あり/正々堂々の「杏林」を/手術過誤事件/済生学舎の廃校/熊本の医風/開業当時の嫌がらせ/調剤過誤事件/居留地に日本人医師がいない/化学を知らぬ老大医/後藤新平氏の入閣/米国東航艦隊医官の歓迎会

 6 集談会
医業の報酬について/博士を論じる/医学界の現状を憂う/病名の告知について/軍医の不足について

 7 奨進医会・「医談」
奨進医会とは/「医談」の方針/奨進医会の事業拡張について/創始者・富士川雪/常務委員・江馬春■/医家先哲追薦会のこと

第2部 医学史関連の話
東京大学医学部の歴史/維新前後の解剖教育/日本の生理学教育/麻酔法の歴史/近年の外科手術と麻酔法/日本眼科の由来/幕府医学館/西洋種痘法の祖・楢林宗建/京都の種痘始め/肥前大村藩の種痘/大槻玄沢の「蘭学事始」序文/青木昆陽と前野良沢/日本と関係のある西洋医家/医史学の歴史/田口博士逝く/長与専斎翁の還暦祝宴会/本草学の大家・伊藤圭介先生/ミュルレル先生を偲ぶ/幕末の臨床講義

第3部 江戸時代の話
万延元年のアメリカ渡航/徳川家康臨終考/カピタン一行との対話記録/贈位を期に高野長英のこと/原南陽/杉本仲温/賀川玄悦/後藤艮山/吉益東洞/医家を志す者へ/君子医になれ/医者は行いを慎め/謝礼の多少を言うな/医を学ぶ者の心得/病を攻める心/治を尽くすは医の道なり/貴人とて恐れるべからず/侍医は吟味すべし/医者組合にあきれる/大病人を引き受けたら/へぼ医者に伝授/明人にされた義斎

あとがき/「医談」の号数と発行年月一覧/主要人名索引

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