近代以降、日本は西洋異文化(近代文化)との融合を果たしたが、中国はそれが不可能であった。なぜそのような状況がうまれたのか。本書は日中親族集団の構造を手がかりとして、日本が中国の親族文化、特に宗族制度を受容しなかった理由、またともに「アジア文化圏」に属する両国の、近代以降における西洋異文化との衝突の原因と融合の条件を探る。
ニッチュウシンゾクコウゾウノヒカクケンキュウ
日中親族構造の比較研究
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体裁A5判・430頁
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刊行年月2005年06月
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ISBN4784212418
内容
目次
序 章
第一部 日本親族集団の父系擬制的・非出自的・無系的および血統上での未分化のキンドレッド構造に関する検証
第一章 日本古代血縁集団に関する研究とその問題点
はじめに
第一節 ウヂ集団についての研究史の概括
1津田氏説と戦後の「政治的主従関係」説
2婚姻形態における母系制と父系制の論争
3一九七〇年代以降の「双系出自」、「双方親族集団」および「イエ社会」をめぐる研究
第二節 ウヂ集団の「出自」および「双方親族集団」をめぐる研究の問題点
1吉田説をめぐる鬼頭氏の批判と吉田氏の反省
2義江説と鬼頭氏の批判
3明石説について
4鬼頭氏の「双方親族集団」説とその問題点
むすび
第二章 文化人類学における出自理論とその古代史研究における意義
はじめに
第一節 文化人類学における出自論の発端と発展
1単系出自集団──リヴァーズの出自論
2非単系構造の血縁集団の特徴および双系出自(二重出自・両系出自)とその区別
3「出自」と「親族」、「双系出自集団」と「双方親族集団」の区別
第二節 出自集団「構成員資格」の意義とその認定様式――吉田・義江・明石説問題点
1「構成員資格」の内容およびその意義について
2構成員資格の性質およびその認定様式
3吉田・義江・明石説の問題点について
むすび
第三章 日本古代社会の婚姻形態と血縁構造――中国の「同姓不婚」との比較において――
はじめに
第一節 「姉妹型一夫多妻婚」と「異母兄妹婚」
1「姉妹型一夫多妻婚」
2「異母兄妹婚」
第二節 皇族・豪族の婚姻実態および日本人の「一族」の意識
1皇族と豪族の婚姻実態とその特徴
2「純血統」と「一族」の文化人類学上の意義
むすび
第四章 氏族系譜における非出自系譜の性格
はじめに
第一節 系譜の形とその性格
1地位継承と地位継承系譜
2氏族系譜の性格──義江・明石説をめぐって
第二節 延暦一八年一二月戊戌勅からみた氏族系譜の特徴
1勅の中の「源・流、宗・姓」について
2勅からみた氏族系譜(本系帳)の基本的な性格
3勅の歴史的作用
第三節 氏族系譜の非出自の性格に関する考察
1神話・伝説およびその祖先意識について
2姓と改賜姓
3「随母姓」と「両属性」および「母祖」と「女性の中継」
むすび
第二部 継承制・相続制における特徴とその文化的分析の展開
第五章 日本古代社会における王位継承と血縁集団の構造――中国との比較において──
はじめに
第一節 王位継承の意味
第二節 兄弟姉妹継承の実態と「直系」説
1日本古代社会における兄弟姉妹継承と中国殷の「兄終弟及」
2王位候補者と継承者の資格について
3直径継承と立太子について
4持統~元明天皇以後の立太子と譲位について
第三節 女帝の継承
1女帝登極の正統性について
2女帝の身分と女帝継承の性格
むすび
第六章 平安時代の養子縁組と蔭位制
はじめに
第一節 『養老令』「戸令・聴養の条」と『法曹至要抄』の「養子承分事」
1『養老令』「戸令」における「聴養の条」
2『法曹至要抄』における「養子承分事」
第二節 養子と養親の間の血縁関係――藤原氏を中心に
1養父子血縁関係の実態
2養父子血縁関係の分類
第三節 養子と「家」・家業・家財の形成との関わり
1「家」の芽生えとその特徴
2律令官人制と貴族「家」の家業と家産
3養子と養父・実父の位階および官職
むすび
第七章 近世の「養子願書」と「養子証文」──中国の養子文書との比較を加えて──
はじめに
第一節 財産の「単独相続制」と「家督制」の確立、および中・近世養子に関する条令
1財産の「単独相続制」と「家督制」が確立した意義
2幕府での養子法と武家における養子の特徴
第二節 武家の「養子願書」と庶民家の「養子証文」
1武家の「養子願書」
2庶民家の「養子証文」
3近世の住友家系から見た「持参金養子」の一例
第三節 中国における養子離縁に関する法令と文書
1養子離縁に関する法令
2養子離縁に関する文書
3養子離縁に関する法令と文書から見た特徴
むすび
第八章 「皇考」をめぐる論争から見た人の後(あとつぎ)たる者の「礼」――日本との比較において――
はじめに
第一節 前漢「皇考廟」・「恭王廟」の実行
1「皇考廟」と宣帝の即位
2哀帝の立太子と「恭皇廟」に関する論争
第二節 「濮議」と「大礼の議」
1宋の英宗の擁立と「濮議」
2明の世宗嘉靖皇帝の登極と「大礼の議」
第三節 顕陵――特殊な明の帝陵
1帝陵
2顕陵
第四節 貞成親王と典仁親王の「太上天皇」という尊号について
1「太上天皇」とは
2貞成親王(後崇光院)の「太上天皇」尊号について
3典仁親王の「慶光天皇」という「尊号事件」について
第五節 継嗣と継統および親権と皇権
むすび
終章
1父系出自・双方的親族集団と父系擬制的・非出自的・無系的および血統上での未分化のキンドレッド
2「重義軽利」と「功利主義」、「身分制」と「契約制」
3近代化への視座
付篇一 中国の宗法制と宗族およびその研究の歴史と現状
はじめに
第一節 宗法制についての文献紹介
第二節 前期における古代宗法制の特徴・規則と成立の歴史およびその研究の現状
1古代宗法制の特徴と規則
2漢・唐における古代宗法制の研究について
第三節 後期における宗族についての研究と宗族の変化
1宋以後の社会の特徴
2宋における古代宗法制についての研究
3近代中国宗族の実態
4明・清から近代と現代における宗族の研究について
むすび
中国宗族(家庭史・中国譜牒学史を含む)の研究一覧
付篇二 「礼」と「家・国一体化」およびその文化の特質――「中国周代の儀礼と王権」へのコメント──
1「礼」と「家・国一体化」
2「礼」と「家・国家一体化」の特質
初出一覧
あとがき
索引
紹介媒体
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古文書研究 63
2007年6月20日
成清弘和