内容

加賀藩士遠藤高璟(1784-1864)が著した『写法新術』(1825-1850)は、まさに江戸後期の視覚変革がもたらした一つの結実であった。その独創的な内容は既成概念への批判精神に溢れ、視覚についての論考は哲学的に深い洗練された議論を展開している。
本書では、18世紀後半から幕末にかけての視覚論についての時代状況、遠藤の加賀藩における知的交流とその思想を論じた上で、『写法新術』の内容を分析し、遠藤の倫理観、写法の理論と視覚論の関係に注目して遠藤の視覚論を明らかにする。

目次

Ⅰ 歴史的位置づけ
  はじめに
  『写法新術』の歴史的位置づけ
  『写法新術』の提起する問い
  江戸の視覚変革の先行研究
  『写法新術』の先行研究
  『写法新術』の写本および原本成立年について
  本書の構成

Ⅱ 遠藤高璟と加賀藩の洋学
  遠藤高璟の生涯
  加賀の和算及び洋学の系譜
  遠藤高璟の著作
 
Ⅲ 『写法新術』の写法理論
  『写法新術』の構成
  『写法新術』の「真写」理論
  「真写」の実践としての「観積法」

Ⅳ 『写法新術』の視覚分析
  『写法新術』の視覚理論の歴史的位置
  普通の見方の問題点 ――心と「心積法」
  見方の多様性 ――視、観、察

Ⅴ 結論

[影印]『写法新術』(京都大学附属図書館蔵)

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