日本図書館協会選定図書

内容

古事記や万葉集に表現される神話時代の男女の姿のなかには、神を育て、神に添って、神の意志を普遍化するという女性特有の聖なる力が見いだせる。それこそが、『源氏物語』の男女の恋にも続いている、日本人のロマン性を持ったあこがれの思い、心の基層である―― 宮中歌会始の選者を永年務めた編者が、師である折口信夫が体系化できずに終わった「いろごのみの道徳」論に向きあい、『源氏物語』に流れる日本の心を読み解く。

目次

【第一部】

源氏物語に流れる日本人の心の伝統(岡野弘彦)
  一 『源氏物語』が内包するいにしえびとの心
      『源氏物語の壮大さに惹かれて
      『源氏物語』がはらむ古代
      いざなみ、いざなぎの相聞
      大国主とすせりひめ
      邇邇芸の命といはなが姫・このはなさくや姫
      仁徳天皇の大后石の日売の嫉妬の話
  二 『源氏物語』は日本の物語の原型 ―神話の中の男主人公と女主人公
      『源氏物語』は「物語」の典型
      『源氏物語』の男主人公 光源氏
      『源氏物語』の女主人公
      神話・物語の女主人公の系譜と特徴
      出雲神話の女主人公・すせり姫
      いわながひめ・このはなさくやひめ
      とよたまひめ・たまよりひめ
      やまとひめ
      男主人公と女主人公の原型
      女主人公の資格
      母子神信仰
  三 『源氏物語』へとつらなる神話の古層
      天女の話
      聖なる女性は水の女
      六条御息所と霊魂信仰と女の言葉の力
      聖なる女性と聖なる水との関係
  四 和歌的世界と物語の成立
      恋の文学、恋の物語、恋の歌の伝統
      『源氏物語』の和歌的世界
      歌による求婚の心
      歌・物語による魂の感染教育
      「まなび」と「あそび」
  五 平安文学の中の『源氏物語』
      王氏と他氏の対立
      天才・紫式部
      道長の存在
      文学サロン
      伊勢との関わり
  六 原(ウル)源氏物語を構想した折口信夫
      折口信夫の『源氏物語』への思い


【第二部】

  一 『源氏物語』(グレート・ブックス)の演習方法と実際( 須賀由紀子)
      学習社会に向けて
      魂の世話―古典に学ぶ
      M・J・アドラーのグレート・ブックスとグレート・アイディアズ
      日本古典を貫いているグレート・アイディアズ
      感染教育テキスト『源氏物語』の魅力
      
  二 民俗学から読む『源氏物語』(松田義幸)
      『源氏物語』の鑑賞視点・いろごのみ論
      ファッション感覚から入る『源氏物語』
      女房読み語りによる魂の感染教育
      折口信夫の「いろごのみの道徳」
      岡野弘彦先生の「いろごのみ論」再考
      丸谷文学論から読む『源氏物語』
  
  三 『源氏物語』の感染教育力(江藤裕之)
      コンティニュイティー(連続)の日本文化
      言葉による精神のコンティニュイティー
      力ある言葉で書かれた日本の古典(グレート・ブックス)
      魂の感染教育としての古典(グレート・ブックス)教育
      
  四 ネットワーク時代の『源氏物語』( 犬塚潤一郎)
      作品制作の場―身体、知覚、論理
      『源氏物語』の作品化―内容の空虚と表現の多様
      源氏でなければならないのは
      岡野源氏とネットワーク的意識
      
      
      
      
      

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