ブシノエトストソノアユミ

武士の精神(エトス)とその歩み

武士道の社会思想史的考察

アレキサンダー・ベネット 著

  • 体裁
    A5判・296頁
  • 刊行年月
    2009年04月
  • ISBN
    978-4-7842-1426-6

カバーなど書籍の外装に多少の汚れ・傷みがございますのでご了承ください。

著者・編者略歴

Alexander Bennett…1970年ニュージーランド生まれ.カンタベリー大学修士課程修了.京都大学博士(人間・環境学).大阪体育大学 他 非常勤講師.全日本剣道連盟参与

内容

 武家政権の誕生から、明治維新に伴う身分制度の廃止に至るまでの、武士文化の発展と変遷の過程を考察。文化人類学者のクリフォード・ギアツによる宗教の定義を援用し、各時代における武士の精神を精査することによって、武士の気風や動機などが、どのように進展していったか、その過程を明らかにする。
 特に、武術が果たした意味に着目。武術によって、武士は生死の問題や存在の意味について真剣に考えるようになり、庶民社会とかけ離れたもう一つの「現実」を体験した、とし、明治以降の「武士道」の「再発明」に武術が果たした役割にも触れる。

目次

序論
「武士道」という言葉
近代武士道
論文概要

第1章 武士エトスの系譜
  1歴史上見られる武士エトスのさまざまな名称
  2平安・鎌倉時代における武士の全体管理
  3思想の成文化
    『極楽寺殿御消息』の例
  4室町時代の武士 ─「文武両道」
    『等持院殿御遺書』の例
    『竹馬抄』の例
    『今川状』の例
  5『甲陽軍鑑』の実戦的武士道
    「ありのまま」の精神
    バランスの重要性
  6江戸武士道
    儒教の影響 ─陽明学
    朱子学の影響
    自己修養
    死の覚悟
    『葉隠』の武士道
    武士の「優越性」
  7まとめ

第2章 象徴の体系
  1ギアツによる宗教の定義
    象徴の体系
  2武士文化における「名誉」の象徴体系
  3「象徴的資本」としての名誉とその変化
  4初期武士の名誉意識
  5名を上げる
  6名誉と武士のアイデンティティー
  7武士名誉の「焦点移動」
  8まとめ

第3章 武士の「気風」と「動機」
  1「気風」と「動機」
  2主従制度の概観
  3戦国時代の主従関係
  4江戸時代の変化
  5死と武士の「気風」
  6他人に対する暴力
  7自分に対する暴力
  8まとめ

第4章 武士の一般的な秩序
  1武士秩序の創造
  2時代変化の概説
  3武士世間の意義
  4脅かされる秩序
  5太平に起因するジレンマ
    北条氏長の貢献
    柳生宗矩と「活人剣・殺人刀」
    山鹿素行
    大道寺友山
  6まとめ

第5章 武術を通じての武士の宗教的な体験
  1儀式
  2戦の意味
  3戦の儀式的手順
  4武術流派の成立
    小野派一刀流の心技
  5武術流派の役割
  6武術修練の精神的・身体的作用
  7冷静な精神状態
  8「機」・「先」と意志作用
    「型」の意義
  9平時における武術修練
    「撃剣」の発達
    武術における武士と庶民の違い
  10まとめ

第6章 武士身分の解体と武士文化の活用
  1明治維新の概要
  2「武職」の改革
  3身分制度の廃止
  4士族の失業
  5榊原鍵吉の「撃剣興行」
  6撃剣興行の人気
    撃剣会興行表
  7撃剣興行に対する批判
  8警視庁の剣術活用
  9自由民権運動と武術の役割
  10教育制度の武術導入
  11国家主義の波と大日本武徳会の設立
  12武徳会と軍国主義
  13まとめ

第7章 国民武士道の創造 ─「サムライ魂」の再発見
  1武士文化と明治ナショナリズム
  2西周と「軍人勅諭」の成立
  3天皇と忠誠
  4明治武士道の始まり
  5「尚武民族日本人」 ─ 井上哲次郎
  6新渡戸稲造と海外向け「武士道」
  7新渡戸武士道の問題点
  8海外における「武士道」ブーム
  9まとめ

全体のまとめ

参考文献
索引

紹介媒体

  • 読売新聞文化面

    2009年5月10日

    鷲見一郎

    本 よみうり堂

  • 神道フォーラム28号

    2009年7月15日

    記事

  • 神道フォーラム28号

    2009年7月15日

    新刊紹介

  • このエントリーをはてなブックマークに追加