サゴロモモノガタリキョウジュシロンキュウ

『狭衣物語』享受史論究

川崎佐知子 著

  • 体裁
    A5判上製・640頁
  • 刊行年月
    2010年02月
  • ISBN
    978-4-7842-1486-0

著者・編者略歴

かわさき さちこ……大阪府生.大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了.日本古典文学専攻.博士(文学).現在,佛教大学・立命館大学非常勤講師.主要論文に「『狭衣下紐』諸本考」(『中古文学』55号),「『一簣抄』の周縁」(『國語國文』75巻11号)など.

内容

 『源氏物語』に並称された平安朝後期物語の傑作『狭衣物語』の受容の様相を文献学的見地から徹底的に分析検証し、連歌師紹巴が天正18年に著した『狭衣下紐』を享受史の中核に位置づけた。
 (財)陽明文庫所蔵『狭衣下紐』2種(近衞信尹筆外題・近衞尚嗣筆外題)、宮城県図書館伊達文庫蔵『狭衣物語抄』(猪苗代兼寿作)ほか未紹介資料5種を全文完全翻刻掲載。物語文学研究の新スタンダード。

目次

緒 言 伊井春樹

〔論文篇〕

第一章 里村紹巴と『狭衣物語』

第一節 『狭衣下紐』の伝本
  『狭衣下紐』研究の現在
  『狭衣下紐』の現存伝本
  書誌からみた特記事項
  諸本分類の基準
  写本から承応三年版本へ
  増補本系への展開
  里村家の書『狭衣下紐』
第二節 『狭衣下紐』の注釈方法
  『狭衣下紐』の書名から
  『源氏物語紹巴抄』と『休聞抄』
  『狭衣下紐』の序文
  『狭衣物語』の作者
  『狭衣物語』の時代設定
  紹巴の狭衣注の世界
第三節 紹巴所用『狭衣物語』とその意義
  流布本の源泉は紹巴か
  紹巴所用『狭衣物語』の転写本
  紹巴予本の傍記
  『狭衣下紐』における「異本」と紹巴の本文校訂
  紹巴予本と流布本
  紹巴は『狭衣物語』の権威だった
附 節 紹巴と奈良連歌
  紹巴研究のこれまで
  紹巴と祐範・宗具
  紹巴生存中の作品
  紹巴没後の作品
  校本・紹巴発句帳より

第二章 三条西実隆『狭衣系図』の諸問題

第一節 三条西実隆『狭衣系図』の諸本と特色
  『狭衣系図』とは
  『狭衣系図』の現存伝本
  諸本分類の基準
  承応三年版本の位置づけ
  打它氏本の復原
  天理大学附属天理図書館吉田文庫蔵本の特徴
  第一系統から第二系統への展開
第二節 基礎資料としての『狭衣系図』
  三条西実隆の『狭衣系図』
  『狭衣下紐』における「系図」
  『狭衣下紐』の系図引用
  人物伝の常套化
  紹巴と『狭衣系図』

第三章 猪苗代兼寿の『狭衣物語』享受

第一節 『狭衣物語抄』の伝本
  『狭衣下紐』以後の狭衣注
  『狭衣物語抄』の現存伝本
  猪苗代兼寿と陸奥国仙台藩主伊達家
  秘された合作―近衞基?・との関係―
  最善本の比定
  『狭衣物語抄』の意義
第二節 『狭衣物語抄』の関連資料
  昭和初期の『狭衣物語抄』研究
  兼寿書き入れ本としての天理図書館蔵本
  兼寿書き入れ本から『狭衣物語抄』へ
  承応三年版本との関係
  天理図書館蔵本の『系図』・『年立』
  『狭衣物語抄』関連資料の価値
第三節 延宝五年の「狭衣」校合
  猪苗代兼寿と近衞基?・
  『基?・公記』の「狭衣」校合
  「狭衣」以外の校合
  後西院の収書
  校合の目的
  『狭衣物語抄』作成の背景

第四章 『狭衣物語』享受の周辺

第一節 謡曲『狭衣』について
  ふたつの謡曲『狭衣』
  三条西実隆作謡曲『狭衣』の先行研究
  後土御門帝の『狭衣物語』書写校合と狭衣能
  合作か単独作か
  謡曲『狭衣』の上演記録
  享受史における謡曲『狭衣』

第二節 河村秀根『狭衣入紐』について
  河村秀根の出自とその業績
  秀根自筆稿本と書き入れ本
  跋文からの問題提起
  河村秀根と『狭衣物語』
  「ある人」の推定
  『狭衣入紐』の意義

〔資料篇〕

翻刻・陽明文庫蔵近衞尚嗣筆外題『狭衣下紐』
翻刻・陽明文庫蔵近衞信尹筆外題『狭衣下紐』
翻刻・陽明文庫蔵近衞尚嗣筆『狭衣系図』
翻刻・東京大学総合図書館南葵文庫蔵『狭衣系図』
翻刻・宮城県図書館伊達文庫蔵『狭衣物語抄』


初出一覧
索引

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