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内容

 高句麗の人々が営んだ古墳は独特の形状と内容をもち、さまざまな視座からの研究が行われてきた。本書では壁画に描かれた図像や題材のなかで、もっとも重要な対象である墓主像に焦点をあて、文献や金石文と照らし合わせながら体系的に考察する。
 また先行研究ではなされなかった、同時期の東アジア地域の壁画史料との相関的検討を行う。麈尾や凭几など、壁画に描かれた威儀具・威信財にも着目し、それを持つ墓主の社会的位置づけや当時の価値観にも言及する。高句麗社会と文化の一端を復元し、古代のみならず、東アジアの歴史的時空の再構築をめざす労作。

目次

序 章
 第一節 本書における高句麗壁画古墳研究の方法と目的
 第二節 高句麗古墳壁画の研究略史ー図像学適方法とその展開-
 第三節 研究史における本書の位置と目的ー
-東アジアにおける高句麗壁画古墳の検討のためにー

第一章 高句麗古墳壁画の墓主像
 第一節 東アジアの壁画墓に描かれた墓主像の基礎的考察-魏晋南北朝期における高句麗古墳壁画の相対的位置-
 第二節 高句麗古墳壁画に描かれた麈尾を執る墓主像-魏晋南北朝期の士大夫としての描画-
 第三節 高句麗古墳壁画中の什器と墓主-凭几の所有者たち-
 第四節 高句麗古墳壁画における鎧馬図考-鎧馬騎乗人士の階層的位置づけをめぐって-

第二章 高句麗古墳壁画に現れた文化と信仰
 第一節 銘文の検討による高句麗初期仏教の実相-徳興里古墳墨書の仏教語を中心に-
第二節 高句麗壁画古墳に描かれた仏教的行事-「百戯伎楽」図の意味と系譜を中心として-
第三節 徳興里古墳築造における葬送と造墓の思想的背景-墓誌銘の出典論的研究による接近-
第四節 高句麗古墳壁画に描かれた角杯-亡命漢人による文物移入の様相-
第五節 高句麗古墳壁画の角抵図について-日本古代の力士表現との比較をかねて-

第三章 東アジアにおける高句麗壁画古墳の史的環境
 第一節 装飾古墳における大陸系人物像の出現-五郎山古墳壁画を中心として-
 第二節 高句麗古墳壁画と飛鳥時代古墳壁画の比較検討
 第三節 古墳時代における塵尾の存否について-中華文物の流入と「威信財」の実体-
 第四節 朝鮮三国時代の「王陵」およびその歴史的特質

 付 論
 第一 高句麗古墳における瓦?使用の方法とその意味-瓦当銘の検討から-
 第二 高句麗古墳にともなう石柱についての基礎的知見

終 章 高句麗壁画古墳と東アジア世界
 第一節 高句麗壁画古墳の墓主像の示す世界
 第二節 高句麗古墳壁画に現れた宗教と思想
 第三節 東アジア世界における高句麗壁画古墳の史的背景
 第四節 高句麗古墳壁画の文化史的考究と課題

あとがき
初出・原題一覧
図版出典一覧
索引(事項/地名・遺跡名/人名)

紹介媒体

  • 『古代文化』第63巻第4号

    2012年3月30日

    篠原啓方(関西大学)

    新刊紹介

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