内容

日本最初の世界文化遺産である法隆寺1400年におよぶ歴史を通観する、初の寺史。所蔵の数万点におよぶ膨大な文書・記録を整理し、一般に知られた古代の姿のみならず、中世から戦後にいたる法隆寺の姿をも新史実を盛り込んで明らかにする全3巻のうちの中巻(近世)。固有名詞・難字などにはふりがなを付し、引用史料は原則として読み下しとするなど、法隆寺の歴史を広く社会的な共有財産とすることをめざす。

★★★編集からのひとこと★★★
法隆寺といえば、現存最古の木造建築を有することで知られ、その歴史も古代に注目が集まることが多いと思います。一方で本巻が扱う近世、そして次巻で扱う近代の歴史は、これまであまり注目されてこなかったのではないでしょうか。
本巻では、織豊期からの約300年を扱い、時代が移り変わる中で、幾多の危機に法隆寺がいかに対応したかが描かれています。徳川と良好な関係を築き帰依を受け、また畿内や江戸で御開帳を行うなど様々なアイデアと行動力で寺の存続を図る姿は、現在のクラウドファンディングへの挑戦にも重なります。古代・中世とはまた違う法隆寺の豊かな歴史を、ぜひ紐解いてみてください。

目次

法隆寺史近世編刊行にあたり(聖徳宗管長・法隆寺住職 古谷正覚)

第一章 中世から近世へ―織豊期の法隆寺
一 織田信長の大和進出
二 豊臣秀吉・秀長と法隆寺
三 近世的寺領の形成
四 江戸時代の法隆寺領

第二章 江戸前期の法隆寺
一 江戸初期の法隆寺と龍田藩
二 寺内争論と徳川家康の寺社政策
三 寺内争論の展開と寺法の再編

第三章 法隆寺大工
一 豊臣秀頼による慶長大修理
二 大工頭中井正清と徳川家康
三 大坂の陣と法隆寺
四 法隆寺大工と中井役所

第四章 開帳・勧化と伽藍修復
一 元禄期の開帳・勧化と伽藍の修復
二 享保期以降の開帳・勧化

第五章 幕府・朝廷と法隆寺
一 南都奉行の巡見
二 江戸幕府と法隆寺
三 朝廷と法隆寺のつながり

第六章 年中行事と法会
一 年中行事
二 江戸時代の聖霊会・遠忌
三 将軍家の法会

第七章 寺院組織
一 学侶と堂方
二 江戸時代の景観と子院・末寺
三 学侶と堂方の確執と寺内改革

第八章 寺領と財政
一 法隆寺領の村々
二 寺山と岡本村・極楽寺村
三 法隆寺の財政

第九章 庶民の信仰と参詣
一 門前法隆寺村の発展
二 賑わう境内
三 西円堂と庶民信仰
四 名所案内記にみる法隆寺
五 法隆寺への関心の高まり
六 境内案内人の登場 

索引(人名・事項)
図表一覧
執筆者紹介・執筆担当

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