ゲンダイビジュツシニオケルゼンエイショノリポジショニング

現代美術史における前衛書のリポジショニング

墨人会とその同時代表現をめぐって

宮津大輔 著

  • 体裁
    四六判・270頁
  • 刊行年月
    2022年06月
  • ISBN
    978-4-7842-2021-2

内容

「前衛書」を、いかにとらえ直すべきか?
第二次世界大戦によって既存の価値観が覆される中で、世界の美術は「熱き抽象」へと向かう。
本書は、井上有一、江口草玄、森田子龍らの墨人会メンバーが、純粋な造形的原理と文字が有する意味表象が止揚する「美術としての『前衛書』」に至る道筋を、背景となる思想や社会状況から明らかにする。
さらには「書」と「美術」が東西の二項対立を越え、相互に影響を与えあった状況を抽象表現主義、アンフォルメル、具体美術協会などとの比較から論じることで、美術史における「前衛書」のリポジショニングを図るものである。

★★★担当編集からのひとこと★★★
前衛書というと、にわかには文字の形を判別できない抽象絵画のような作品が思い浮かぶのではないでしょうか。
では、戦後の前衛書を牽引した墨人会のメンバーたちは、なぜそのような作品を制作するにいたったのか。本書を読むと、彼らの問題意識、同時代に世界的に展開した美術史の潮流との関係が、宮津先生の幅広い知見によって明らかにされ、その道筋が徐々に見えてきます。学術書ではありますが、前衛書をどう見たらよいのか分からない、という方にもぜひ繙いていただきたい一冊です。

目次

序章 本書のねらいと「書」の定義
はじめに
1 「書」の定義
2 「書」における芸術と教育 –「書ハ美術ナラス」論争/勧業による輸出産業としての芸術
序章 註釈・引用


第1部 「前衛書」の誕生と発展

第1章 「前衛書」誕生、そして墨人会結成へ
1 終戦と「前衛書」の誕生
2 墨人会結成-既存書壇との決別

第2章 墨人会による「前衛書」の技法と思想的背景
–井上有一、森田子龍、江口草玄を中心に
1 「α部」における非文字書の端緒とモダニズム絵画からの影響
2 非文字書の時代-「書」を巡る「イコン」「シンボル」「インデックス」
3 「書」の独自性探求-文字性への回帰
4 「書」におけるパロールとエクリチュール
5 身体表現としての「書」

第1部 註釈・引用


第2部 「前衛書」が有する同時代性
-墨人会と同時代表現における共通点と差異を巡って

第1章 抽象表現主義―「前衛書」と同時代表現 その一
1 ハロルド・ローゼンバーグの「アクション・ペインティング」と「前衛書」について
2 ジャクソン・ポロックにおける「無意識」と井上有一「卒意の書」
3 クレメント・グリーンバーグの「絵画における『純粋性』」と「前衛書」
4 「抽象表現主義」と「前衛書」の異同について

第2章 アンフォルメル―「前衛書」と同時代表現 その二
1 ミシェル・タピエの「アンフォルメル」
2 ジョルジュ・マチウの作品と「前衛書」
3 日本における「アンフォルメル」の受容
4 「アンフォルメル」から「反芸術」へ

第3章 具体およびその他のムーブメント―「前衛書」と同時代表現 その三
1 現代美術懇談会」について
2 吉原治良と「具体美術協会」
3 「コブラ」とピエール・アレシンスキーによる『日本の書』

第2部 註釈・引用


第3部 「前衛書」のリポジショニングとその未来

第1章 総括:「前衛書」のリポジショニング
1 「抽象表現主義」「アクション・ペインティング」と前衛書
2 「アンフォルメル」「タシスム」「新エコール・ド・パリ」と前衛書
3 「具体美術協会」と前衛書
4 総括:前衛書のリポジショニング

第3部 註釈・引用


終章 「前衛書」から、「書」の未来へ
1 墨人会以後の「前衛書」
2 現代書の諸相
3 書の先へ
終章 註釈・引用

紹介媒体

  • 『アート・コレクターズ』No.161

    2022年8月

    著者インタビュー

  • 『月刊美術』No.565(2022年10月号)

    2022年9月20日

    ART BOOKS 新刊案内

  • 『美術新聞』2022年10月5日付

    2022年10月5日

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