第47回⽇本児童⽂学学会特別賞 受賞
コンコウスルセンゼンノエイゾウブンカ
混淆する戦前の映像文化
幻燈・玩具映画・小型映画
-
体裁A5判・432頁+カラー口絵8頁
-
刊行年月2022年12月
-
ISBN978-4-7842-2046-5
内容
戦前の日本には、映画館以外の場所で利用された「非劇場型」の映像機器が多種多様に存在していた。ときに家庭の娯楽として、ときに学校や宗教施設で教育目的に受容されていたそれらは、今では衰退し忘れ去られて久しい。
本書では、その実態を掘り起こすため著者自身が十数年にわたって調査・分析し、撮影した明治~昭和(戦前期)のスライドやフィルム、映写機器等の一次資料を豊富に組み込み、戦前期日本で幻燈や玩具映画、齣フィルム、小型映画などの雑多なメディアが入り混じりながら技術的・産業的に発展・回帰・衰退していくさまを明らかにする。
デジタル一元化の時代に、傍流として置いてきた「異形」の数々を拾い上げる「メディア考古学」的実践の書。
★★★編集からのひとこと★★★
「何を研究対象として選ぶべきか」。卒論を書く学生は勿論、研究の道へ踏み入れるには、多かれ少なかれ悩むことでしょう。
悩んだ末に、いわゆる「映画」ではない家庭用の映像機器という「けもの道」を選んだのが、この本の著者です。
本書に出てくるのは、水平型映写機や紙製幻燈など含め、現れては立ち消えていった戦前の映像機器の数々。公的な機関にはほとんど残存していないので、膨大に蒐集された個人コレクションが数多く収録されています。
映画史研究だけではない、より幅広く包括的な映像文化史を構築していくための重要な1パーツとして、またちょっと変わった映像制作のアイデアを探しているクリエイターにも、幅広く読まれることを願います。
目次
はじめに メディア考古学という方法
第Ⅰ部 映像メディアの大衆化―幻燈全盛の時代
第1章 社会教育ツールとしての幻燈―鶴淵幻燈舗を中心に
1 国家教育と幻燈
2 通俗教育と鶴淵幻燈舗の事業
第2章 布教活動としての幻燈―中島待乳と池田都楽を中心に
1 キリスト教幻燈と中島待乳
2 仏教幻燈と池田都楽
第3章 口演童話「お伽噺」と幻燈―雑誌『少年世界』の幻燈利用
1 少年世界幻燈隊と鶴淵幻燈舗
2 少年幻燈隊の活動
第Ⅱ部 子供たちの映像文化―玩具映画全盛の時代
第4章 幻燈から活動写真のはざま―家庭用映像機器広告にみる混淆
1 幻燈から活動写真へ―水平走行アニメーションを中心に
2 『少年世界』掲載の過渡的視覚玩具
第5章 視覚玩具文化とその流行
1 大阪花街の視覚メディア文化
2 齣フィルムの流行
第6章 玩具映画の産業構造
1 乱立する玩具映画会社
2 子供の玩具映画体験
第Ⅲ部 アマチュア映画と教育映画のナショナリズム―小型映画全盛の時代
第7章 フランス小型映画の世界市場戦略と日本
1 フランスにおけるパテ・ベビー産業
2 日本における9ミリ半映画
第8章 混淆する小型映画の栄枯盛衰―国家統制の陰
1 大阪ベビー・キネマ・クラブと大阪朝日新聞社
2 ホーム・ムービーズ・ライブラリーと大阪毎日新聞社
第9章 「教育映画」から「文化映画」、そして幻燈復活へ
1 「社会教育」映画から「学校教育」映画へ
2 戦時期統制下の幻燈復活
おわりに
紹介媒体
-
『図書新聞』第3583号
2023年3月18日
岩本憲児
書評
-
表象文化論学会ニューズレター「REPRE」vol.48
2023年6月
岡室美奈子
新刊紹介
-
「NFAJニューズレター」第21号(2023年7月-9月号)
2023年7月1日
岡島尚志
「FROM THE DIRECTOR」
-
2023年11月
吉村いづみ
書評
-
『日本歴史』第908号
2024年1月
加藤厚子
書評
-
『表象』18
2024年6月
常石史子
書評