身分によって分断された国家・社会が解消していった近代の成立期において、武士という旧身分の出身者が、思想・宗教といった分野でいかなる役割を果たしたのか―(序章より)。
本書は、「旧幕臣」を射程として、主に維新後に受容した思想および信仰(キリスト教、淘宮術、性理学、日本弘道会等々)の分析を通して、彼らがいかなる精神的な変貌・回心を遂げたのかを考える。とりわけ民間に身を置き宗教活動に従事した人々や、公的に就いた職務とは別に特定の思想・信仰などにもとづく私的側面を持った人物のなかから「旧幕臣」を析出し、横断的にみることで、明治維新期の文化面における変革の様相を浮き彫りにする。
★★★担当編集からのひとこと★★★
現代は身分制社会ではないですが、たとえば旧役職のしばりは、思いのほか、その後の人生を左右するものだと思います。
本書において、「旧幕臣」「宗教」というフィルターを通して見えてくる幕末維新後の社会のありようは、現代社会を考えるうえでも、たとえば新興宗教のことなど、重要な示唆を与えてくれるのではないでしょうか。
メイジノキュウバクシントソノシンコウ
明治の旧幕臣とその信仰
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体裁A5判・392頁
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刊行年月2023年02月
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ISBN978-4-7842-2049-6
内容
目次
序章
本書の構成と各章の位置づけ
前提としての近世の宗教環境と幕臣
第1章 大原幽学没後門人と明治の旧幕臣
沼津兵学校資業生高松寛剛・早川省義兄弟
山崎衡という人物―高松力蔵の後身―
伊藤隼の軌跡―横浜語学所から沼津兵学校・静岡学問所へ―
性理学と明治の旧幕臣
伊藤家文書の発見
第2章 大原幽学の教えを学んだ旧幕臣列伝
神文を提出した人物
神文を提出しなかった人物
入信した女性たち
高松家の人々
第3章 淘宮術をめぐる明治の旧幕臣
群像淘宮術と維新後の旧幕臣
新家春三とその家族・親類
新村出とその養父母
史料
第4章 新島襄の聖書研究仲間 杉田廉卿について
新島と杉田
兄武田簡吾の獄死
武田家の素性
第5章 旧幕臣のカトリック受容と迫害への抵抗静岡藩沼津郡方鈴木孫四郎とその一家
鈴木龍六のカトリック入信
カトリックの松長伝来
駿州沼津駅宗門事件
事件の再燃と拡大
信徒埋葬拒否事件
ルコント神父の松長赴任
その後の信徒たち
第6章 西村茂樹の思想的共鳴者としての旧幕臣
東京修身学社と旧幕臣
沼津修身学社
日本講道会と旧幕臣
日本弘道会と旧幕臣
第7章 江原素六の教育関係活動―日清・日露戦間期を中心とした素描―
自由党時代と学制研究会への参加
高等教育会議と学制改革問題
文部省訓令第一二号問題への対応
星亨と東京市教育会をめぐって
憲政党―立憲政友会と教育行政
教育勅語変更発言事件
第8章 明治以降の歴史編纂と旧幕臣
徳川幕府による修史事業の終焉
旧幕臣の官製修史への参画・協力
佐幕派史観と在野の史学
戊辰の戦記
家史・自伝・伝記
終 章
紹介媒体
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『日本歴史』第910号
2024年3月
門松秀樹
書評
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『宗教研究』
2024年6月
藤本頼生
書評