著者・編者略歴

1956年島根県生まれ。静岡大学人文学部卒業、大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、博士(文学)。現在、愛媛大学名誉教授。
主要業績『室町幕府と守護権力』(吉川弘文館、2002年)、『中世の地域権力と西国社会』(清文堂出版、2006年)、『山名宗全』(吉川弘文館、2009年)、『山城国一揆と戦国社会』(吉川弘文館、2012年)、『中世後期の守護と文書システム』(編著、思文閣出版、2022年)。

内容

中世の終わりに登場した戦国大名が自らの力で領国をつくり上げ、幕府や守護といった古い権威から自立して新しい地域支配を行う。このような教科書的な戦国時代像は、じつは「戦国大名」とは何かという判別基準からして曖昧なままに積み上げられてきたもので、近年の研究の深化により多方面から問い直されつつある。
本書は、戦国大名という概念を疑うことなく構築されてきた従来の研究に対し、戦国期の守護を軸にすえて多様な権力秩序の展開の様相をさぐったものであり、戦国期守護論を提示して当該期の権力論の再構築を目指す。

★★★編集からのひとこと★★★
世に戦国大名論は数多ありますが、畢竟その多くはある大名家や特定の地域の研究であって、それゆえ各研究者が持つ戦国期のイメージは、自身のフィールドに大きく影響を受けたものになりがちです。その点、著者の川岡先生は、長年愛媛を拠点に四国、中国、九州、そして畿内の諸勢力を広く研究されてきただけでなく、科研の共同研究(成果として同氏編『中世後期の守護と文書システム』)では視野を全国にひろげて、戦国期の権力秩序のあり方を検討してこられました。本書はそれらに基づき、これまで主張してこられた戦国期守護論の集大成となる1冊です。

目次

序章 戦国期守護とは何か

第Ⅰ部 中世後期の守護支配と武家領主
第1章 出雲における守護支配と武家領主
補論1 武家領主の権力編成と役負担
第2章 石見における守護支配の展開と益田氏
第3章 大内氏の石見支配と吉見氏

第Ⅱ部 戦国期守護の分国経営と権力構造
第5章 大内氏の分国支配と室町幕府―守護体制
第6章 細川氏・大内氏と寛正伊予の乱
第7章 天文伊予の乱と河野氏権力
第8章 戦国期伊予の国成敗権と領主権
第9章 戦国期但馬の守護と領主

第Ⅲ部 権力秩序の流動化と戦国期守護
第10章 京極氏から尼子氏への出雲国成敗権の継承
第11章 戦国期の権力秩序と出雲尼子氏
第12章 毛利氏の覇権確立と家格上昇
補論2 戦国期の地域社会論と権力移行論

終章 本書の成果と課題

初出一覧
あとがき
索引

紹介媒体

  • 『日本歴史』第912号

    2024年5月

    伊藤大貴

    書評

  • 『歴史学研究』第1055号

    2024年11月

    藤井崇

    書評

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