内容

「京舞妓」、「おもてなしの文化」、「雅な貴族文化」など、バラ色の表象がひしめく京都文化。だがこれらの京都イメージは、近現代を通じて、政治的・社会的に、近世以来の「伝統」を基にしながらも再構築し創り出された側面が強い。
本書では、近代京都をめぐるさまざまな文化を研究対象に取り上げ、その歴史的淵源を探るとともに、既存の観光言説や「京都文化」論の相対化を試みる。

★★★編集からのひとこと★★★
各論文ごとに取り上げる文化は、いずれも現代の代表的な京都イメージにつながるものばかり。現在一般化している京都文化の、近現代にみるルーツを学術的に分析しており、現代の問題関心からみても興味深い内容となっています。
京都文化をより掘り下げて理解していくうえで、京都ファンにもアンチにも、双方読んでいただきたい本です。

目次

序(高木博志)

Ⅰ ロマン主義と花街

《祇園町》の空間変容(加藤政洋)
マキノ映画にみる京都の花街・舞妓表象―万国博覧会から『祇園小唄 絵日傘 第一話 舞ひの袖』(1930年)へ(冨田美香)
戦後日本映画における島原―反ロマン主義的トポスとして(木下千花)
吉井勇と京都―「夢の女」の発見 異国憧憬のまなざしと祇園(細川光洋)
国画創作協会の成立(中野慎之)
梶原緋佐子初期作品研究―社会の底辺を生きた女性を描く(植田彩芳子)
〔作品紹介〕梶原緋佐子《廓美人図》1922~24年頃、旧三枡楼所蔵

Ⅱ 日本主義と京都文化

近代京都の農民美術と民芸―副業を奨励した二つの運動(青江智洋)
猪飼嘯谷と明治神宮絵画館壁画(長志珠絵)
戦時下の新村出(福家崇洋)
1940年代の寿岳文章―日本主義と民主主義(高木博志)

Ⅲ 京都文化の相対化

歴史を演じる―祝祭とページェントの近代京都(ジョン・ブリーン)
東本願寺と京都画壇―明治度両堂再建における障壁画制作の道程(國賀由美子)
富岡鉄斎と考槃社(柏木知子)
境内の殺人事件―水上勉『雁の寺』と京都の裏面(イリナ・ホルカ)
「加賀百万石」の記憶と京都文化―近代金沢における都市イメージの形成(本康宏史)

Ⅳ 地域社会と京都文化

「教育的都会」京都の誕生―爛熟する官立学校誘致の経験(田中智子)
京都・尊攘堂における「活きた勤王」―近代京都文化を作り、支えた人びと(池田さなえ)
近代京都の外国人旅行者と東山―粟田の変化と美術工芸品購入を中心に(山本真紗子)
近代京都染織業と近江商人系商店―拡大の実態と染呉服の大衆化(北野裕子)
除夜の鐘と京都―草創期ラジオとの関わりに着目して(平山昇)
小売市場の普及に見る生活文化の近代的変容(和田蕗・中川理)

紹介媒体

  • 『京都民報』

    2023年10月22日

    井上章一

    書評

  • 『読売新聞』夕刊

    2023年11月18日

    書籍紹介

  • 『京都新聞』

    2023年12月7日

    文化面

  • 『毎日新聞』夕刊

    2023年12月18日

    「「京都イメージ」の虚と実 「伝統」の再構築、複眼的に」

  • 『日本史研究』第743号

    2024年7月

    西脇彩央

    新刊紹介

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