キンセイコウキノダイミョウカカクトギレイノセイジシ

近世後期の大名家格と儀礼の政治史

30s

篠﨑佑太 著

  • 体裁
    A5判・368頁
  • 刊行年月
    2024年03月
  • ISBN
    978-4-7842-2073-1

著者・編者略歴

1988年、東京都生。2019年、中央大学大学院博士後期課程修了。博士(史学)。
東京都公文書館史料編さん係専門員を経て、現在宮内庁書陵部研究職および中央大学兼任講師。
主な論文「幕末・維新期における両敬関係の構築とその意義」(『古文書研究』82、2016年)、「江戸城・皇城の「政治空間」」(『歴史評論』873、2023年)ほか。

内容

近世後期から幕末期にかけて、「内憂外患」の政治状況下で幕藩関係はいかなる変容を遂げたのか。
本書では、大名家格のひとつである殿席と、御目見などの殿中儀礼との関係を分析することで、その実態を追究する。とくに将軍家ゆかりの諸大名が控える大廊下下之部屋に着目し、同席をめぐって行われる幕府と大名たちとの政治的駆け引き、およびその影響を検討した。
またペリー来航後、大廊下席の諸大名が政治的に急浮上していく過程や、幕府が諸大名をどのように遇したのかを、幕末期に将軍の拠点となる二条城・大坂城での殿中儀礼の具体的な様相とともに明らかにし、「衰微する御威光」の真相を探る。

★★★編集からのひとこと★★★
「儀礼」というと、なにか恭しいセレモニーのようなものを想像しますが、実際のところは登城の仕方や控えの間(殿席)、行列道具、幕府からの通達手段等々……現代からみれば些事に思えるようなことまで、多岐にわたります。そしてそれらはすべて家格、いわゆる「お家柄」によって事細かに定められていました。
どうにか家格を上昇させようと四苦八苦する大名たちの駆け引きからは、当時の彼らが「家」にかける熱意(あるいは執念)をありありと感じられます。

目次

序 章
 一 本書の目的
 二 先行研究の整理と課題
 三 本書の分析視角と課題
 四 本書の構成


第一部 近世後期における大名殿席の展開

第一章 近世中期の幕藩関係と政治交渉―福井藩松平家の家格上昇運動を事例に―
 はじめに
 一 松平宗矩の養子縁組をめぐる交渉
 二 一橋徳川家の後見と松平家の家格上昇
 三 松平重富の養子入りと家格上昇運動
 おわりに

第二章 十八世紀後期における大名家の家格の変化―福岡藩黒田家を事例に―
 はじめに
 一 黒田治之の養子入りと家格の変化
 二 黒田斉隆の養子入りと家格の変化
 三 斉隆の死去と一橋徳川家の後見
 おわりに

補 論 寛政期の江戸城殿中と殿席―幕府目付による「御座敷内通路」をめぐって―
 はじめに
 一 十八世紀後期の江戸城殿中
 二 寛政二年の目付の問題意識と評議
 三 寛政十年の殿中通路の増補
 おわりに

第三章 文政・天保期における大名家の家格上昇と集団化―大廊下席大名を中心に―
 はじめに
 一 将軍家からの養子入りと家格の変化
 二 天保改革と大廊下席大名家の集団化
 おわりに

第四章 嘉永期における御家相続と家格―川越藩松平家を事例に―
 はじめに
 一 松平誠丸の相続と家格
 二 八郎麿の川越藩松平家相続
 おわりに

  
第二部 幕末期の幕府政治と大廊下席大名の政治参加

第五章 嘉永期における徳川斉昭「参与」の実態と影響
 はじめに
 一 徳川斉昭「参与」の概要
 二 徳川斉昭「参与」の実態
 三 徳川斉昭「参与」の影響
 おわりに

第六章 安政四年における大廊下席大名の政治動向―「同席会議」の上申書提出をめぐって―
 はじめに
 一 安政期大廊下席大名の交際
 二 大廊下席による同席会議の発端
 三 大廊下席大名による同席会議とその影響
 四 その後の大廊下席同席会議
 五 同席会議の議論と関心
 おわりに


第三部 幕末期の政治と殿中儀礼

第七章 文久の幕政改革と諸大名の政治参加―江戸城登城と「国事周旋」―
 はじめに
 一 松平慶永と文久の幕政改革
 二 池田慶徳の「国事周旋」
 三 黒田斉溥の「国事周旋」
 おわりに

第八章 元治元年の二条城―殿中儀礼と幕府政治―
 はじめに
 一 元治元年の二条城殿中
 二 上洛に供奉した大名の登城と目的
 三 参予大名の登城と幕府政治
 おわりに

第九章 慶応期大坂城における殿中儀礼
 はじめに
 一 文久・元治期の将軍上洛と大坂城
 二 慶応期の大坂城における将軍
 三 在坂大名の儀礼
 おわりに

終 章
 一 各部の総括と成果
 二 本書のまとめと展望


初出一覧
あとがき
索引

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