著者・編者略歴

倉本一宏…1958年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位修得退学、博士(文学)。国際日本文化研究センター教授。『日本古代国家成立期の政権構造』(吉川弘文館、1997年)、『摂関政治と王朝貴族』(吉川弘文館、2000年)、『『御堂関白記』の研究』(思文閣出版、2018年)等。

内容

約四百年にもわたり、貴族が栄華を誇った平安時代。平和な世から武士が発生し、政権を樹立するまでに至ったのはなぜか? 貴族たちはなぜ武家政権の成立を許したのか? そして武家政権下で公家が存続できたのはなぜか?
「貴族と武士」という日本史の最重要テーマを、古代・中世・近世・近代・東洋史の研究者約40名が集い議論する。

★★★編集からのひとこと★★★
古代から近代まで、第一線で活躍する研究者、総勢約40名が集いできあがった本書。ステレオタイプな「貴族」「武士」像を打ち破り、その実像に迫ります。

目次

はじめに

第一部 古代

摂関期の武人と貴族(寺内 浩)
摂関期における武者の「優免」(倉本一宏)
「王朝国家軍制論」の擁護―批判への回答(下向井龍彦)
「王朝」観念と〝貴族道〟(関 幸彦)
嫁取儀礼の成立―貴族と武士の婚姻儀礼の変容(服藤早苗)
一〇世紀の貴族社会における狩猟―狩猟を伴う行幸を中心に(堀井佳代子)
平安貴族の新宅・移徙の儀について―敦煌文書宅経との比較研究(龔 婷)
平安貴族と「ゐなか」(久葉智代)
平安・鎌倉期の出産儀礼と公武―着帯儀を中心に(東海林亜矢子)
武士と触穢に関する覚書(上野勝之)
五体不具穢とは?(佃 美香)
相撲・相撲人と武芸・武士(森 公章)
牛車をめぐる対話―新井白石と公家文化(京樂真帆子)
一〇世紀後葉地方軍制の一齣(告井幸男)

第二部 中世

武士論の成果と課題(呉座勇一)
平安末~鎌倉時代の摂関家と武家勢力(樋口健太郎)
文士と武士―鎌倉幕府評定衆家の軍事(田中 誠)
貴族はいかにして生き残ったか―藤原俊成を取りまく女性たちを中心に(美川 圭)
里内裏について―両統迭立期の内裏 (野口孝子)
建武政権による元代仏教導入の試み―渡来僧と聖節法要(榎本 渉)
室町幕府将軍御台被官と附庸奉公衆(木下 聡)
室町殿「公家化」の儀礼空間(松永和浩)
伊勢国司北畠氏は「公家・貴族」か(岡野友彦)
公家と武士のキメラ―鎌倉将軍藤原頼経(青山幹哉)
「坂東武士」のイメージ(野口 実)
「武士団」という語の成立について(髙橋昌明)
後鳥羽上皇や有力廷臣の笠懸などの武芸と馬場―水無瀬離宮・上賀茂社を中心に(豊田裕章)

第三部 近世・近代

近世前期、「首都江戸」の京都文化の摂取に関する考察―権力都市・政治都市の権威化(大石 学)
萩藩毛利家における公武婚(石田 俊)
公家の震災復興と大名家―文政京都地震を中心に(磯田道史)
華士族身分と「家」意識―名族後裔による改姓事例の紹介(松田敬之)
麝香間祗候の役割―嵯峨実愛の動向を中心に(刑部芳則)

第四部 武士の国際比較

中国における文と武―侠と武人、門閥貴族、士大夫・郷紳と文人(伊東貴之)
武と文―馬上で天下を治むるをあたわず(劉 暁峰)
武士と中国文化―「児干説話」の検討を中心として(榎本淳一)
「白馬の禍」からみる中国古代史の文武関係(梁 暁弈)
八~一〇世紀の東アジアにおける「自立する『武』」の台頭とその行方(宋 浣範)
西洋の騎士と王権の関わり―カスティーリャ・レオン王国を事例として(滝澤修身)


研究会の記録

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