ヒガシアジアタコクカンカンケイシノケンキュウ

東アジア多国間関係史の研究

十六―十八世紀の国際関係

木村可奈子 著

  • 体裁
    A5判・308頁
  • 刊行年月
    2024年03月
  • ISBN
    978-4-7842-2078-6

著者・編者略歴

2014年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。現在 滋賀県立大学人間文化学部地域文化学科講師。博士(文学)。

内容

本書は十六―十八世紀の東アジアをフィールドに、直接的・間接的にかかわり合う各国の史料を駆使して、東アジアの国々の交渉の実態を描き出し、東アジアの多国間の関係を検証する。特定の国や地域の歴史にとらわれず、明清中国・朝鮮・日本・琉球・シャムの事例を取り上げることで、各国の「対外関係史」をベースにした東アジア国際関係史研究では見えてこない側面を浮かび上がらせる。

★★★編集からのひとこと★★★
国や地域という視点から離れた世界史叙述をめざして、グローバル・ヒストリーが提唱されて久しくなりますが、まだまだ試行錯誤の中にあるようです。本書が提唱する「多国間関係史」は、ある一国、一地域に中心をおかない歴史叙述をめざした試みです。中心をおかないことで、歴史上の出来事の今まで見えていなかった背景、別の出来事とのつながりなどが次々と浮かび上がります。
本書は東アジアの近世という限られた空間と時間を対象とした小さな第一歩ではありますが、「多国間関係史」の可能性を感じさせるには十分な1冊です。

目次

序 章 東アジアの多国間関係史を考える
一 本書の問題関心
二 本書の射程
三 本書の構成

第一章 明の対外政策と冊封国暹羅―壬辰戦争におけるシャムからの借兵論を手掛かりに
はじめに
第一節 壬辰戦争とシャム
第二節 シャムからの借兵論に対する同時代人の意見
第三節 明とシャム
おわりに

第二章 勘合とプララーチャサーン―田生金「報暹羅國進貢疏」からみたシャムの国書と対明・対日関係
はじめに
第一節 明末のシャム使節
第二節 「報暹羅國進貢疏」
第三節 「報暹羅國進貢疏」からみた明末のシャムの勘合使用
第四節 明と日本に送られた金葉のプララーチャサーンの比較
おわりに

第三章 日本の琉球侵略後の明の対日警戒
はじめに
第一節 琉球侵略以前の日本の対明講和交渉
第二節 琉球侵略後の波紋
第三節 村山等安の台湾遠征とその後
おわりに

第四章 日本のキリスト教禁制による不審船転送要請と朝鮮の対清・対日関係―イエズス会宣教師日本潜入事件とその余波
はじめに
第一節 宣教師の日本潜入への警戒と朝鮮への不審船転送要請
第二節 以後の朝鮮の漂着船処置
おわりに

第五章 三藩の乱時期の日本の情報収集活動と朝清関係
はじめに
第一節 三藩の乱の勃発と情報収集
第二節 対馬からの一度目の書契と清への倭情通報
第三節 朝清間の摩擦の高まり
第四節 対馬からの二度目の書契
おわりに

第六章 冊封使李鼎元の琉球認識と清・琉球・日本・朝鮮四国の国際関係―柳得恭手稿本『燕臺再游録』をもとに
はじめに
第一節 柳得恭と李鼎元
第二節 李鼎元と歴代冊封使の波上寺銘文に対する考証
第三節 柳得恭と李鼎元の琉球に関する問答
第四節 『使琉球記』の沈黙
おわりに

附 章 柳得恭『燕臺再游録』の諸本と遼海叢書本のテキスト問題について
はじめに
第一節 遼海叢書本と現存『燕臺再游録』の諸本
第二節 諸本の比較
おわりに

終 章

初出一覧/あとがき

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