著者・編者略歴

東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了.博士(文学).国立民族学博物館グローバル現象研究部准教授.『解放しない人びと,解放されない人びと――奴隷廃止の世界史』(東京大学出版会,2020年),"Slave Trade Profiteers in the Western Indian Ocean: Suppression and Resistance in the Nineteenth Century" (Palgrave, 2017).

内容

人類史に刻まれるさまざまな移動から日々の何気ない移動まで、それは望んだ移動か、はたまた強制された移動か?
私たちは人々の「移動」に対して、大なり小なり「自由」「不自由」と結びついたイメージを付与している。本書は移動を、関係性の構築・再編の契機と捉え、人の具体的な移動を多様な学問的手法と問題関心で解剖していく。そうすることで、私たちが移動に対して抱く感覚はグラリと揺らぎ、多面的に問いなおされるであろう。

目次

序章 移動を問い直す(鈴木英明)

第一部 移動を生み出す力学

第一章 労働のイニシアチブと出稼ぎ移民―トランシルヴァニアの山村から(杉本 敦)
第二章 ヨーロッパにおけるジプシー/ロマの移動とホーム―フランスに暮らすロマ移民とマヌーシュを事例に(左地亮子)
第三章 「移民の世紀」における西アフリカ―ガンビアにおける落花生輸出と移住労働者の事例から(小林和夫)                           
第四章 自由をまたぐ移動―西アフリカのソニンケの人びと(三島禎子)
第五章 アフロユーラシアにおける牧畜民の移動―ソマリの事例を中心に(池谷和信)

第二部 移動が生み出す関係性

第六章 近代華工の実践(プラクティス)を通した自由/不自由の再考(園田節子)
第七章 故地と移動先とのせめぎあい―インドの商業集団マールワーリーとその自画像の諸相(田中鉄也)                             
第八章 海を渡るということ―一四世紀のイエメン・ラスール朝の裁判官と大宦官(馬場多聞)
第九章 出土遺物からみる人とモノの移動―カフィル・カラ遺跡出土資料を中心に(寺村裕史)
第一〇章 ユーラシア東方における外来人エリートの移動と「自由」―唐代~モンゴル時代における陸・海ディアスポラの比較史(向 正樹)

第三部 「移動の自由」再考

第一一章 「航行の自由」をめぐる抗争としてのジェンキンズの耳戦争(薩摩真介)
第一二章 奴隷交易廃絶活動がもたらすもうひとつの自由/不自由―一九世紀インド洋西海域における航海者と船籍問題(鈴木英明)
第一三章 移動は人を自由にするか―「自然」を介した「自由」と「移動」の概念再考(新免光比呂)
        
終章 座談会

索引

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