著者・編者略歴

1978年生. 慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻後期博士課程単位取得退学, 博士(史学). 武蔵大学人文学部教授. 著書に『礼とは何か──日本の文化と歴史の鍵』(人文書院, 2020年), 『平安京はいらなかった─古代の夢を喰らう中世─』(吉川弘文館, 2016年), 『中世京都の空間構造と礼節体系』(思文閣出版, 2010年)ほか。

内容

〝大盤振舞〟の語源となった鎌倉幕府の共食儀礼「垸飯(おうばん)」を徹底的に分析し、法を補完する礼の役割を解明しつつ、全く新しい鎌倉幕府像を導き出す。

同僚=傍輩(ほうばい)の結束を根幹とする〝武士の組合〟としての鎌倉幕府、北条氏権力の本質を逸脱した北条泰時の執権政治、御家人を権力と説得で儀礼の場に引きずり出す執権時頼、将軍と得宗が「公」として並び立つ末期幕府、足利尊氏の登場を促した深刻な人材不足──。
鎌倉幕府の本質と実態の葛藤を追跡し、室町幕府成立の必然性に説き及びつつ、鎌倉幕府の成立宣言を発見して幕府成立年論争に終止符を打つなど、歴史学的儀礼論を再構築しながら通説を塗り替える鎌倉幕府論。

目次

序 章 鎌倉幕府儀礼論・垸飯論再構築の意義と派生的諸問題
補 論 鎌倉幕府の儀礼と年中行事―導入としての鎌倉幕府儀礼世界の素描―

第一部 創立期鎌倉幕府の儀礼─亠型組織の発足―

第一章 中世武家礼制史の再構築に向けた垸飯儀礼の再検討序説─垸飯の源流と幕府儀礼化以前の沿革─
第二章 鎌倉幕府垸飯付帯引出物の儀礼的メッセージ─終わりなき戦時と伊勢遷宮・大仏再建─
第三章 創立期鎌倉幕府のアイデンティティ模索と礼制・法制─公武法圏の接続と常置の将軍─

第二部 執権政治期鎌倉幕府の儀礼──一揆型組織への転換

第四章 鎌倉幕府垸飯儀礼の変容と執権政治─北条泰時の自己規定と傍輩・宿老・御家人─
第五章 鎌倉幕府垸飯役の成立・挫折と〈御家人皆傍輩〉幻想の行方─礼制と税制・貨幣経済の交錯─
第六章 北条時頼政権における鎌倉幕府年中行事の再建と挫折─対話的理非究明と専制的権力の礼制史的葛藤─
第七章 鎌倉幕府垸飯行事の完成と宗尊親王の将軍嗣立

第三部 得宗専制期鎌倉幕府の儀礼──二系列型組織への帰着

第八章 得宗専制期における鎌倉幕府儀礼と得宗儀礼の基礎的再検討
第九章 北条氏権力の専制化と鎌倉幕府儀礼体系の再構築─得宗権力は将軍権力簒奪を志向したか─
第一〇章 鎌倉末期の得宗儀礼に見る長崎円喜・安達時顕政権の苦境─得宗空洞化・人材枯渇・幕府保守─
結 論 古代・中世礼制史と鎌倉幕府論・室町幕府論の新地平を展望する─誰が、なぜ、何になろうとしたのか─

成稿一覧
あとがき
索引

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