日本本国と植民地台湾・朝鮮、「満洲」で形成された帝国の知は、西欧の知といかなる連環性をもっていたのか。
知識人による欧米の新思想の受容と利用、植民地大学での学知生産と現地社会との関係、そして解放後の知の再編などの、ひとつひとつの事例を追っていくことで、西欧の知と帝国の知の交錯、そして西欧の知を淵源とする日本人と被支配民族の知の対抗/協調/変奏関係を読みとく。
多様な専門をもつ18人の論者が、それぞれの視点から帝国日本の知の歴史とその世界史的意義を考えた国際日本文化研究センター共同研究の成果。

ショクミンチテイコクニホントグローバルナチノレンカン
植民地帝国日本とグローバルな知の連環
日本の朝鮮・台湾・満洲統治と欧米の知

-
体裁A5判・672頁
-
刊行年月2025年03月
-
ISBN978-4-7842-2091-5
内容
目次
序(松田利彦)
第Ⅰ部 研究の現状と本書の梗概
植民地期朝鮮とグローバルな知の連関―研究の現状―(松田利彦)
「知」で台湾を世界と結ぶ―近年台湾史の研究成果を手掛かりに―(陳姃湲)
要旨(松田利彦・陳姃湲・通堂あゆみ・やまだあつし・鄭駿永)
第Ⅱ部 日本本国における知の形成と植民地
近代日本精神医学にみる音楽療法の諸相と連環(光平有希)
近代日本における衛生統計調査の射程―東亜研究所『東亜諸民族の死亡に関する衛生統計的調査』(一九四三年)の成立背景―(香西豊子)
第Ⅲ部 科学と帝国主義
鳥居龍蔵の民族誌と学知の発信(中生勝美)
帝国の藻類学―岡村金太郎の朝鮮産海藻研究―(石川亮太)
日本統治期台湾林業と植物学―ドイツ林学とアメリカ・ロシア植物学の交錯を中心に―(やまだあつし)
第Ⅳ部 植民地医学の形成と展開
蛇毒と寄生虫―北島多一、高木友枝とその周辺―(石原あえか)
帝国日本と脚気研究―植民地朝鮮における軍医・佐藤恒丸の研究を中心に―(松田利彦)
日本帝国における血液型と指紋をめぐる人類学的関心―法医学者・古畑種基による研究を手がかりに―(高野麻子)
満洲移民と栄養研究―安部淺吉と紫藤貞一郎による主食研究を手がかりに―(福士由紀)
第Ⅴ部 植民地大学における知の生産
京城帝国大学予科・ふたりの自然科学者―森為三と竹中要にみる近代日本植物学研究の進展と「帝国」の学知―(通堂あゆみ)
戦前・戦時期のアジア論と日本社会科学者の植民地経験―京城帝国大学時代の森谷克己を中心に―(周雨霏)
風土と科学―富士貞吉に見る衛生学と植民地台湾の服装改良―(顏杏如)
第Ⅵ部 植民地現地の知と被支配民族
裏面の近代史―日朝における閔妃の伝記―(森岡優紀)
「植民地」官僚の統治認識―樺太と南洋―(加藤道也)
林茂生における「帝国主義」と「植民地」―言説上の同盟―対抗関係に着目して―(駒込武)
ウイリアム・E・グリフィスの植民地主義と朝鮮―キリスト教ネットワークと知の連関―(李省展)
コロニアリズム教育に対する批判としての民主主義教育?―呉天錫のコロンビア大学博士論文と民主主義教育論のグローバルな連環―(鄭駿永)
共同研究「植民地帝国日本とグローバルな知の連環」報告一覧
あとがき/索引(人名・事項)