1944年生。1977年、京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。1978年、大阪経済大学経済学部講師着任。同大学経済学部長、日本経済史研究所所長を歴任して、2010年に退職。現在、名誉教授。

ブリテンシホンシュギカノアイルランドノウギョウ
ブリテン資本主義下のアイルランド農業
土地戦争の経済史的背景

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体裁A5判・844頁
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刊行年月2025年02月
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ISBN978-4-7842-2092-2
著者・編者略歴
内容
草を食む家畜がアイルランドの大地を占領し、人々は消えていった。
大飢饉により住民の海外脱出と移民に一気に弾みがつき、1891年に行われた国勢調査では羊の数が人間を上回り、1901年には牛の数が人間を上回った。
自然と人間の力が和合して発展していく農業の取り組みもそこにあったが、アイルランド農業がロンドンを初めとするブリテン市場の動向に左右される傾向はますます強まり、大規模な土地支配の利害が絡み合った投機資本の参入さえ広がっていった。
本書は、「世界の工場」ブリテンの横腹に抱え込まれていくアイルランドの一九世紀経済史最後の言葉「家畜増え、民失う小さな国」を同時代の資料で実証するものである。
★★★編集からのひとこと★★★
1845年に始まるジャガイモの凶作が原因で、アイルランドで大飢饉が起こりました。それからたった数年で100万人以上が死亡し、また、多くの人々がアメリカへと向かい、人口は激減しました。
著者は「まえがき」で、戦争による貧苦によって家族がバラバラで暮らした自らの体験を振り返り「何故、貧乏人はバラバラにならなければならないのか。時に対立し、はては喧嘩をしなければならないのか」という疑問から経済学を学んだと述べています。若き日に抱いたこの疑問は、800頁を超える大著として結実しました。強大な「世界の工場」ブリテンに覆いかぶさられ、生活の力が吸い取られていく小さな「国」アイルランドの姿を描きます。
目次
まえがき
凡例
序章 アイルランド大飢饉―1840年代後半~50年代前半
第1部 19世紀後半アイルランド農業の展開
第1章 大飢饉後の農業構造転換
第2章 牛を中心とした家畜の全国的流通
第3章 生きた家畜をはじめとする大規模な畜産物輸出
第4章 1870年代における農民層分解の全国的分析
第2部 アイルランド農業の担い手を地域から見る
第5章 酪農の中心地で肉牛生産の出発地である南西部マンスター
第6章 北部アルスター経済
第7章 西部のメイヨーへ、コナハトへ行こう
第8章 北東部レンスター・ミーズの大牧畜業―人影がなく草を食む家畜だけが見える大牧場地帯
第3部 ブリテン資本主義下のアイルランド農業と農村
第9章 19世紀後半アイルランド農業を担う人たち
終章 家畜増え 民失う小さな島国アイルランド
あとがき/地図・表一覧/文献目録/索引