一九七三年に創設された中世史研究会は、東海地域を拠点にし、関東・関西の諸学会と並び、日本中世史研究の発展に半世紀にわたって貢献してきた。本書は、創立五〇周年を記念して行われた二年間のシンポジウムの成果である。第Ⅰ部には、東国とされる地域と西国とされる地域のそれぞれの社会構造はどのように描けるかを論じる諸論考、第Ⅱ部には都鄙の関係性や相互認識のあり方を論じる諸論考を収め、併せてシンポジウム当日のコメント、討論記録も収録。政治権力論だけでなく、流通経済や文化意識にも目を向け、中世の列島社会の特質に迫る。
★★★編集からのひとこと★★★
2024年は東海の中世史ににわかに注目が集まっています。中京エリアに本拠を置く中世史研究会の50周年記念論集である本書に加え、吉川弘文館から「東海の中世史」シリーズが、さらに高志書院から「東海道中世史研究」シリーズが相次いで刊行されました。それぞれは別の文脈から生まれた企画ですが、これを機に従来の「みやこと東国の間の地域」という位置づけを超えた、東海論の深化を期待しています。
ニホンチュウセイノトウザイトトヒ
日本中世の東西と都鄙
中世史研究会五〇周年大会論集
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体裁A5判・400頁
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刊行年月2024年09月
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ISBN978-4-7842-2099-1
内容
目次
中世史研究会五〇年の歩み(安藤 弥)
第Ⅰ部 列島東西の社会構造とその変質
本書の目的および第Ⅰ部「列島東西の社会構造とその変質」テーマ設定の趣旨(鹿毛敏夫)
第1章 鎌倉禅・京都禅・博多禅の間隙(斎藤夏来)
第2章 西遷・北遷武家領主と鎌倉期東国武家社会(田中大喜)
第3章 瀬戸内海流通の構造転換―「陶晴賢安芸厳島掟書写」の再考―(中島雄彦)
第4章 織豊期の都市法と諸地域(山下智也)
第5章 東西戦国大名の「地域国家」像(鹿毛敏夫)
第6章 戦国期における室町将軍・古河公方の栄典授与と地域性(小久保嘉紀)
〔コメントと展望1〕既存の枠組みを揺り動かす試み(村井章介)
〔コメントと展望2〕人間の思考の特質に迫るための素材と論点(山田邦明)
〔討論記録〕列島東西の社会構造とその変質(上嶋康裕)
第Ⅱ部 都鄙の連関と相互認識
第Ⅱ部「都鄙の連関と相互認識」テーマ設定の趣旨(水野智之)
第7章 中世前期の道隆流坊門家と都鄙交流(長村祥知)
第8章 南北朝期禅僧の関東認識(池田丈明)
第9章 「東海」地域の成立と京・関東(水野智之)
第10章 伊勢神宮地域をめぐる金融・信用と信仰経済―特に都鄙間の〈地域性〉の視点から―(千枝大志)
第11章 後奈良天皇の諸国への意識―般若心経の奉納を中心に―(上嶋康裕)
第12章 戦国期宗教勢力の都鄙的世界―本願寺を素材として(安藤 弥)
〔コメントと展望3〕都鄙をめぐる中世史研究の成果と課題(井原今朝男)
〔コメントと展望4〕「中心」と「周縁」と日本中世(川戸貴史)
〔討論記録〕都鄙の連関と相互認識(小池勝也)
五〇周年記念大会を振り返る―二つの討論を終えて―(山下智也)