京都府京都文化博物館主任学芸員
コシヲカツグヒトビト
輿をかつぐ人びと
駕輿丁・力者・輿舁の社会史
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体裁A5判・416頁
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刊行年月2025年01月
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ISBN978-4-7842-2108-0
著者・編者略歴
内容
輿を舁くという行為そのものの社会的な意義とは何か。
本書は、前近代社会における職能集団のなかでも、天皇や将軍、公家や武家、有力な寺院や神社など、各権門の有力者の移動に際して輿を舁き、その移動を直接的に担った人々を対象とし、その存在形態および実態を、中近世を通じた長期的なスパンで考察し明らかにすることを目的とする。
行幸や北野祭礼に輿舁として勤める禁裏駕輿丁、祇園会の神輿駕輿丁や山道での職能をもつ八瀬童子、天皇の葬送儀礼に関わる大雲寺力者など、異なる社会層の中で活動する「輿舁」の実態に光をあて、諸側面を比較することで、「輿舁」がいかなる身分であり、社会の全体構成のうち、いかなる位相に定置されるのか、さらにはその職能の実態や社会的機能について探る。
目次
序章 研究課題の設定
一 身分制論・職能論の現状と課題
二 駕輿丁・力者・輿舁研究の視座
おわりに―輿を舁く職能の社会的意義とは何か
Ⅰ 禁裏駕輿丁―天皇の輿を舁く人びと―
第一章 中世前期における禁裏駕輿丁の存在形態
一 古代から中世前期における禁裏駕輿丁の存在形態
二 散在駕輿丁の担い手
三 室町期への展開
第二章 中世後期における禁裏駕輿丁の展開―左近衛府駕輿丁「猪熊座」の出現をめぐって
一 個別駕輿丁から四府駕輿丁へ
二 四府駕輿丁の内部対立
三 左近衛府駕輿丁猪熊座の出現
四 左近衛府駕輿丁猪熊座の組織性と志向性
第二章補論 今町供御人の特質と図像
一 魚棚の所在地域
二 図像を読む
第三章 中世後期における北野祭礼の実態と意義
一 三年一請会の関係史料とその実態
二 北野祭礼の「中核」をめぐって
三 室町幕府と北野社神輿
四 室町幕府と織手
第三章補論 北野祭礼神輿と禁裏駕輿丁
一 北野祭礼の変遷とその性格
二 北野祭礼と禁裏駕輿丁の接点
三 その後の北野祭礼
第四章 禁裏駕輿丁の近世的展開
一 左近衛府駕輿丁猪熊座の拡大
二 近世行幸の復興と猪熊座の増員
三 禁裏駕輿丁の近世的展開と由緒の創出
第四章補論 千切屋をめぐる創業伝承と史実
はじめに―「西村氏系図」が語る創業伝承
一 春日若宮御祭における千切台の存在
二 室町期の諸史料に見える千切屋
三 二つの千切屋―水谷氏と西村氏
四 千切屋・西村家の近世の姿
Ⅱ 力者と輿舁―御輿・棺・神輿を舁く人びと―
第五章 職能民としての八瀬童子
一 八瀬童子の職能―輿舁として
二 八瀬童子の訴訟と後楯
第六章 朝廷葬送儀礼における力者の活動―大雲寺力者と天皇葬送
一 大雲寺力者の史料
二 大雲寺力者の活動―御龕力者として
三 後光明院葬儀の具体像
四 後光明院葬儀の意義
第七章 中近世における祇園会神輿をめぐる人々―祇園会神輿駕輿丁をめぐって
一 少将井駕輿丁・八王子駕輿丁の担い手
二 町と神輿
第八章 中近世における輿舁の存在形態と職能
一 寺院における輿舁―大乗院の場合
二 公家の輿舁―西洞院家の場合
三 輿舁の姿と職能
終章 前近代社会における駕輿丁・力者・輿舁の存在形態
一 中世における行幸の表象
二 行幸と禁裏駕輿丁の実態
三 代替されない要因―職能の特徴
四 輿舁と力者
おわりに―今後の課題
初出一覧/あとがき/索引(人名・事項・研究者名)