1977年生。2007年3月京都大学大学院文学研究科指導認定退学、2010年1月博士(文学)。主な業績に、「町役人としての茶屋四郎次郎家」(杉森哲也編『シリーズ三都 京都巻』、東京大学出版会、2019年)、「幕藩権力の都市支配 都市の支配に、町人はどのように関わったのか」(岩城卓二他編『論点・日本史学』、ミネルヴァ書房、2022年)など。

キンセイキョウトニオケルトシチツジョノケイフ
近世京都における都市秩序の系譜

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体裁A5判・568頁
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刊行年月2025年02月
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ISBN978-4-7842-2109-7
著者・編者略歴
内容
現在の京都市中心部のいわゆる「田の字地区」が上京区・中京区・下京区の三つの行政区に分かれるのは昭和四年からで、その歴史は一〇〇年にも満たない。かつては上京・下京の二つに分かれていた地域概念は、中世末から近代へとつながるが、近世においても様々な展開を経ることになった。
本書では、「町」・「町組」・「惣町」という重層的な内部構造を持っていた近世京都における「惣町」(=上京・下京)に着目し、京都住民と奉行所との間の行政上の関係だけでなく、近世を通じて行われ続けた徳川将軍家との間の儀礼関係も含めて分析することで、近世京都の都市秩序の系譜を明らかにする試みである。
目次
序章
第一節 本書の研究視角
第二節 近世都市史研究の動向と課題
第三節 近世都市・京都の特殊性と本書の前提
第四節 本書の課題と構成
第一章 京都における《惣町》(上京・下京)の位置―「御朱印」に注目して―
第一節 《惣町》の系譜的つながり
第二節 豊臣秀吉・徳川家康の「御朱印」
第三節 「御朱印」をめぐる町代との確執
第四節 近世後期の「御朱印」と《惣町》
第二章 近世前期における都市秩序―徳川将軍家に対する拝謁・献上儀礼の参加者選定にみる―
第一節 徳川将軍家との間の儀礼関係
第二節 近世統一権力に対する儀礼の形成
第三節 年頭御礼の具体的様相
第四節 儀礼の参加者―年頭御礼江戸下り番の決め方―
第五節 京都町奉行所の関与の展開
第三章 近世前・中期、都市行政の展開―年寄と町代の関係をめぐって―
第一節 都市行政の構造的把握
第二節 下京町代の系譜と年寄
第三節 町代(仲間)の行政処理
第四節 年寄による都市運営と町代
第五節 京都町奉行所の都市行政改革と町代
第四章 近世京都の都市歴史叙述―「京都旧記録」類の成立と伝播―
第一節 「京都旧記録」類とは
第二節 淵源としての加舎家本「下古京委細帳」
第三節 「京都旧記録」類成立の背景
第四節 「下古京委細帳」の内容構成
第五節 「京都旧記録」類の伝播と系統
[「京都旧記録」類の類本一覧]
第五章 近世京都における徳川由緒の語られ方
第一節 京都の徳川由緒
第二節 西村近江の批判
第三節 年頭御礼の由緒調査
第四節 町代の語る由緒
第五節 文政町代改儀一件―徳川由緒をめぐる相剋の行方―
第六章 近世中後期における都市秩序の転換―「惣町運動」と徳川将軍家に対する拝謁・献上儀礼―
第一節 重層構造のとらえ返し
第二節 《町組―町》の自己主張と儀礼の肥大化
第三節 《惣町》の結束強化と新規願反対運動
第四節 文政町代改儀一件
第五節 茶屋一件
第七章 近世後期、都市行政の変容―地域住民組織の動向を中心に―
第一節 文政町代改儀一件後の都市行政
第二節 文政町代改儀一件後の地域住民組織
第三節 都市行政と地域住民組織の結びつき
第四節 都市行政への地域住民組織の位置づけ
第五節 都市行政の中で機能する地域住民組織
第八章 近世京都の都市秩序における《惣町》の意義―飢饉への対応からみる―
第一節 近世前期の飢饉対応
第二節 近世中期の飢饉対応―天明飢饉―
第三節 近世後期の飢饉対応―籾年番―
第四節 幕末期の飢饉対応
終章
第一節 近代京都への継承
第二節 支配―被支配をめぐる都市秩序と「特権の体系」
第三節 残された課題
あとがき
[年頭御礼関係一覧表]
索引