1984年、韓国・ソウル生まれ。京都大学大学院博士後期課程研究指導認定退学。博士(文学)。東京国立博物館アソシエイトフェロー、ソウル大学校講師(非常勤)等を経て、2025年3月より韓国・明知大学校人文大学日語日文学専攻助教授。
主な論文「中世的身分のはじまり―種姓観念と家格」(有富純也・佐藤雄基編『摂関・院政期研究を読みなおす』思文閣出版、2023年)、「일본 고대사 연구의 ‘왕조’ 개념(日本古代史研究における「王朝」概念)」(『한국고대사연구(韓国古代史研究)』110、2023年、韓国語)ほか。

チュウセイテキミブンチツジョトカカクノケイセイ
中世的身分秩序と家格の形成

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体裁A5判・300頁
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刊行年月2025年04月
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ISBN978-4-7842-2111-0
著者・編者略歴
内容
古代から中世への移行期とされる平安時代、平安貴族社会の身分秩序はどのように形成され、変化したのか。中世的な家格はいかにして出現するのか。
古代律令制の社会において、官人の身分を規定するのは天皇と官吏個人との関係であった。しかし平安時代には、個人ではなく血統や家系が身分を規定する単位として重要視されるようになる。父祖から続いた官位の継承は家の格付けにつながり、その子孫は家格に従って到達し得る地位を決められる。こうして血筋・種姓により定められる中世的な身分秩序が確立していく。
本書では、「貴種」「公達」「良家」という3つのキーワードを中心に、史書や古記録のみならず、詩序や南都寺院の文献など多様な史料を活用し、それらに表れた貴族の出自や身分に関わる言葉を辿っていく。その地道な作業から、言葉の意味やその対象が時代とともに変遷する「瞬間」を捉え、ひいては古代から中世への身分概念の変化と、家格の形成過程までをも明らかにすることを試みる。
目次
序 章 古代から中世への転換と家格の問題
はじめに
第一節 中世への転換とその画期をめぐって
第二節 平安貴族社会の編成と家格
第三節 本書の問題意識
第四節 本書の構成
第一部 「貴種」と種姓観念
第一章 古代の「種」観念とその変遷
はじめに
第一節 夷狄・異国の「種」
第二節 氏族・家の職掌と「種」観念
第三節 貴賤の「種」と仏教的再解釈
おわりに
第二章 平安貴族社会と「貴種」
はじめに
第一節 九世紀の「貴種」
第二節 一一世紀後半以後の「貴種」
第三節 「貴種」の概念の転換期
おわりに
補論一 「蔭子孫」から「貴種」へ
はじめに
第一節 蔭位制と蔭子孫
第二節 文章生の選抜と「貴種」概念の出現
第三節 文人官僚の貴種認識
おわりに
第三章 藤原頼長の「凡種」観
はじめに
第一節 藤原頼長の日記
第二節 凡種と呼ばれた人々
第三節 貴種と凡種の間
第四節 頼長の階層意識
おわりに
第二部 「公達」と「良家」
第四章 家格としての公達の成立
はじめに
第一節 貴族の子息としての「君達」の登場
第二節 地下公達と公達の家
第三節 陰干公達と諸大夫
おわりに
補論二 実務官僚系院近臣の登用は身分秩序の打破か
はじめに
第一節 院近臣の構成と実務官僚系近臣
第二節 院の人材登用の実態
第三節 新たな身分秩序への固着化
おわりに
第五章 平安時代の南都寺院社会と「良家」―興福寺維摩会研学竪義を中心に
はじめに
第一節 竪者三人制と貴種・良家
第二節 良家僧の出現とその範囲
第三節 貴族社会との関係
おわりに
第六章 平安後期における武士の階層移動―越後城氏の事例を中心に
はじめに
第一節 越後城氏の成長
第二節 階層移動の契機
第三節 内乱をめぐる状況
おわりに
終 章
あとがき/初出一覧/索引/英文要旨