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近代日本における「絵画の変」

洋画の流行からデザインの導入まで

並木誠士 著

  • 体裁
    A5判・436頁
  • 刊行年月
    2025年02月
  • ISBN
    978-4-7842-2112-7

著者・編者略歴

専門は日本美術史・美術館学。徳川美術館学芸員、京都大学助手、京都造形芸術大学助教授、京都工芸繊維大学大学院教授等を経て、現在京都工芸繊維大学特定教授、2008年より同大学美術工芸資料館館長として、展覧会の企画をつづける。
主な編著書に、『近代京都の美術工芸Ⅱ――学理・応用・経営』(編著、思文閣出版、2024年)、『近代京都の美術工芸――制作・流通・館賞』(編著、思文閣出版、2019年)、『日本絵画の転換点『酒飯論絵巻』――「絵巻」の時代から「風俗画」の時代へ』(昭和堂、2017年)、『京都 近代美術工芸のネットワーク』(共編著、思文閣出版、2017年)、『図案からデザインへ――近代京都の図案教育』(共編著、淡交社、2016年)、『絵画の変――日本美術の絢爛たる開花』(中央公論新社、2009年)、『美術館の可能性』(共著、学芸出版社、2006年)など。

内容

明治維新を契機に、日本絵画には重大な「転換点」が訪れた。
それは、たんに新技術としての洋画の輸入に留まらず、美術館の出現や近代的な展示方法による鑑賞の場の変化、裸体画・戦争画といった新しい画題の登場、あるいは絵画的な装飾が施された伝統産業品の輸出振興を目論む産業界の動向など、多岐に渡るものであった。こうした絵画をめぐるさまざまな変化は、相互に連関し合い、また、それぞれが伏流のようなかたちで結びついてもいる。

本書では、従来の絵画史研究では等閑視されがちであった、新都・東京に対する古都・京都の動向、ならびに洋画からデザインへの展開というふたつの軸を設定したうえで、これら近代日本における絵画をめぐる変化を「絵画の変」と捉え、当時の資料を繙きながらその様相を明らかにしてゆく。

目次

はじめに

第1章 転換期としての一九世紀
1-1 研究史
1-2 問題提起
1-3 対象の範囲―章構成の紹介をしつつ
1-4 日本前近代絵画史概説

第2章 日本画と洋画
2-1 京都
2-2 東京
2-3 美術の教科書
2-4 小括

第3章 あらたな絵画鑑賞の場
3-1 「展示」の誕生
3-2 東京の場合 博物館の成立
3-3 京都の場合
3-3 小括

第4章 初の官設展覧会―文部省美術展覧会(文展)
4-1 文展開設の経緯
4-2 審査員をめぐる問題
4-3 文展の開設以後
4-4 絵画の新しい傾向
4-5 小括 

第5章 写実をめぐる近代
5-1 西洋の新知識としての「写実」
5-2 洋画と写真のせめぎ合い
5-3 戯画肖像画の流行
5-4 水彩画の流行
5-5 日本画における「写生」と「写実」
5-6 小括

第6章 新しい画題の誕生
6-1 裸体画―芸術か猥褻か
6-2 歴史画―教訓と顕彰
6-3 戦争画―報道から扇動へ
6-4 小括

第7章 図案からデザインへ
7-1 図案
7-2 図案の教育
7-3 デザインの展開―ポスター
7-4 小括

総括―あるいは、浅井忠のいた近代

あとがき/索引

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