著者・編者略歴

おまた・のりあき…1947年生.京都大学大学院教育学研究科教育学専攻博士課程単位取得退学.現在,大阪府立大学人間社会学研究科教授.主要著書に,『帝国議会と教育政策』(共著,思文閣出版,1981年),『国民文化の形成』(共著,筑摩書房,1984年),『京都府会と教育政策』(共著,日本図書センター,1990年),『近代日本における国民像と天皇像』(大阪公立大学共同出版会,2005年),『南大阪地域大学コンソーシアムの挑戦』(大阪公立大学共同出版会,2006年)ほか.

内容

天皇を中心とする明治政府の誕生以来、数多く発生しながら体系的な研究がされてこなかった不敬事件を、明治期について網羅。豊富な実例を整理・検討することによって明治国家の特質を考察し、天皇制と教育の関係、ひいては天皇制と近代日本および国民の関係を明らかにしようとする大著。
資料編として、228事例と13参考事例の概要および参考文献を収載。

目次

第1章 『濃飛日報』の紀元節社説不敬罪事件
      ――「犯上抗官」時代の終焉――
 第1節 事件の経過
 第2節 紀元節社説「憲法発布の第一年紀に就て」
 第3節 自由民権運動のなかの犯上抗官的不敬事件
 第4節 帝国憲法発布による犯上抗官時代の終焉

第2章 高等学校における不敬事件
      ――学校不敬事件の事例として――
 第1節 第一高等中学校嘱託教員内村鑑三の宸署教育勅語薄礼事件
 第2節 第三高等中学校体操教員の御真影拝礼省略事件
 第3節 第二高等学校雇英語教師クリストファー・カロザース御真影薄礼事件
 第4節 第五高等学校雇教師エルンスト・エルドマンスデルファー御真影欠礼事件
第5節 第三高等学校医学部主事菅之芳の御真影不敬事件
 補遺1 Christopher Carrothersの雇英語教師としての足跡
 補遺2 秋田師範学校校長田中精一の「不敬の言行」について
補遺3 湯浅孫三郎の「不敬事件と礼法の制定」

第3章 動揺する教育勅語日清戦争から戊申詔書にいたる徳育方針再検討の動き  
 第1節 教育勅語の性格と法的効力について
 第2節 西園寺公望文相の「第2次教育勅語」計画と「世界主義」
 第3節 明治天皇に提出された「教育勅語追加」案と某文部次官の「教育勅語撤回」説
 第4節 中島徳蔵の教育勅語撤回風説事件

第4章 尾崎行雄文相の共和演説事件政争の具としての不敬事件
 第1節 共和演説事件の発生と世論の反応
 第2節 文相辞任にいたる経緯
 第3節 天皇の政治関与と内閣の崩壊

第5章 門司駅員の引責自殺と山川健次郎言責事件
      ――二つの忠君愛国をめぐって――
 第1節 門司駅員の引責自殺とその背景
 第2節 玄洋社による建碑計画と九州帝国大学総長山川健次郎の反対意見
 第3節 帝国議会における問題化と事件の終焉

第6章 明治期不敬事件史論
      ――総括にかえて――
 第1節 法規法律上の罪が問われたか否か
 第2節 免職・辞職・譴責等
 第3節 キリスト教への攻撃
 第4節 不敬の対象について
 第5節 行動の様態(特に直訴について)
 第6節 発生当初の社会的場
 第7節 公私の別
 第8節 当初の攻防関係
 第9節 被攻撃者の態度
 第10節 井上哲治郎について
 明治期不敬事件一覧表
 「皇室ニ対スル罪」言渡区分

【 資 料 編 】
 明治期不敬事件228事例および13参考事例の概要と文献

紹介媒体

  • 朝日新聞

    2010年4月18日

    情報フォルダー(読書面)

  • 『歴史評論』2010年9月号(第725号)

    2010年9月10日

    廣木尚

    紹介

  • 『教育学研究』第78巻第1号

    2011年3月

    小野雅章

    書評

  • 『日本教育史研究』第30号

    2011年8月

    平田諭治

    書評

  • 『日本の教育史学』第54集

    2011年10月1日

    高橋陽一(武蔵野美術大学)

    書評

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