じょういち まりこ…1964年生.九州大学を卒業後、毛利博物館学芸員を経て、大阪大学大学院博士後期課程修了(東洋・日本美術史専攻).博士(文学).現在,京都光華女子大学・立命館大学非常勤講師.
主要論文に,「岳翁―了庵桂悟との関わりにみる周文派詩画軸制作の様相」(『フィロカリア』第23号,2006年)「雪舟と岳翁――周文の記憶」(『天開圖畫』第7号,山口県立美術館,2008年),「伝周文筆 沙鴎図」(『國華』第1437号,2008年)など.
関連書籍
ムロマチスイボクガトゴザンブンガク
室町水墨画と五山文学
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体裁A5判・336頁
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刊行年月2012年03月
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ISBN978-4-7842-1607-9
著者・編者略歴
内容
室町時代中期の画僧である「岳翁」は、ながらく伝歴不明の画師であった。昭和二年に「蔵丘」という名を持つことが判明したのち、田中一松氏により、周文の弟子であることを示す同時代史料とともに多くの無落款の作品が紹介されている。
本書ではまず、岳翁と東福寺僧了庵桂悟の関係を手がかりに、詩画軸制作のありようを探り、雪舟と関連づけることで、周文の実像に迫ることを試みる。さらに禅僧の文人的営為を反映するものとして、周文筆と伝えられる詩画軸や煎茶図様の水墨画について考察。関連作品を再検討することにより、室町時代の詩画軸における詩と絵画の関係、禅林での詩画軸の制作行程、禅僧の文人意識の絵画への反映を論じ、詩文僧による〈詩画軸制作システム〉を解明していく。
目次
序 章 室町水墨画の世界―ある山水図の場合―
第一節 「詩画軸」というもの
第二節 岳翁蔵丘筆 山水図(個人蔵)の画賛と画
第三節 田中一松氏の論文について
◆第一部◆
第一章 岳翁―了庵桂悟との関わりにみる周文派詩画軸制作の様相―
第一節 伝歴に関わること
第二節 作品の考察
第三節 史料類から判ること
第二章 岳翁画の画賛と画題の検討
第一節 山水図
第二節 道釈人物画
第三章 雪舟と岳翁―「周文」の記憶―
第一節 文明一八年、堺と周防
第二節 拙宗・雪舟と岳翁の作品を比較する
第三節 禅宗社会と画僧
◆第二部◆
第一章 宝徳二年(一四五〇)の詩画軸制作システム―伝周文筆「沙鴎図」(鹿苑寺蔵)をめぐって―
第一節 伝周文筆「沙鴎図」について
第二節「沙鴎図」周辺の人間関係
第三節「沙鴎図」における詩の言葉
第二章 室町水墨画の「煎茶」―文人図様をめぐって―
第一節 清雅の道―山水・詩歌管弦・茶―
第二節 万里集九の見た幻影―山水図巻と煎茶の童子―
第三節 盧仝像と蘇軾像をめぐって
第四節 文人茶の図様―「琴棋書画図」を中心に―
終章
あとがき
掲載図版出典一覧
岳翁作品および了庵桂悟墨蹟・主要図版掲載書一覧
索引
紹介媒体
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「中外日報」第27701号
2012年4月21日
中外図書室
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『月刊美術』441号
2012年5月21日
Art Book 新刊紹介
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『墨』第217号
2012年7月
新刊ぴっくあっぷ