摂関家筆頭である近衛家伝来の文庫襲蔵の記録及び文書中より、中世の未公刊史料を中心に影印(写真版)で刊行するシリーズ。
本輯では、陽明文庫に架蔵された中世法制史料の優品を収録し、各書の書誌および史料的位置などに関する詳細な解説を付す。
関連書籍
ホウセイシリョウシュウ
法制史料集
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体裁菊判横本上製函入・388頁
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刊行年月2014年09月
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ISBN978-4-7842-1716-8
内容
目次
■法曹至要抄(三巻)〈重要文化財〉
明法博士坂上明基(祖父の明兼とする説もある)の撰。全173条。鎌倉時代の書写にかかる陽明文庫本は、上・中・下三巻を備える最善本といえる。
坂上氏の家学の集大成にして、中世公家法に関するもっとも広汎・体系的な法書である。律令格式の引用と案文との間の著しい乖離は、むしろ現実に対応する「生きた法」との近接を示唆している。
■裁判至要抄(一巻)〈重要文化財〉
坂上明基撰。33箇条。弘長三年(1263)の最古写本で、内容的にも最善本である。
中世公家法研究上、『法曹至要抄』と並ぶ最重要史料であるだけでなく、鎌倉幕府法にも本書を参照した形跡がある。総じて社会の現実を意識した法といえる。
■文永十年九月制符
文永十年(1273)十一月、東大寺権僧正宗性の書写。
「三代制符」中、虫害が比較的軽く、かつ本文の執筆者(宗顕)も明らかで、制符の成立と筆録に期間がもっとも短い。
■追加
鎌倉幕府の追加法令集。追加法令集中もっとも多い実質388箇条を収める。諸追加法令集の成立・系統を考えるうえで、貴重な存在。多数の訴訟法規を収載している点でも注目される。
■式目追加条々
鎌倉幕府の追加法令集。219箇条。ただし末尾11箇条は足利幕府の追加法令。なかでも弘長元年(1261)二月二十日関東新制条々61箇条は、他に見られない貴重な条文である。
■倭朝論鈔(一冊)
天文五年(1536)二月に清原宣賢が行った講釈の内容を受講者が筆録、天文十年(1541)春に成書したもの。『清原宣賢式目抄』の記述・趣旨と微妙に異なる箇所も少なくない。両書の比較研究に新たな途を拓く。
紹介媒体
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『史学雑誌』125編1号
2016年1月20日
新刊紹介