江戸幕府は地域支配を展開するにあたり、合法的支配を手段のひとつとした。幕府直轄領には旗本を派遣し、幕府法を遵守しながら歴史的土壌かつ地域性を包含した支配を行なった。本書では、長崎奉行所で構築されていた司法制度のもとでの、長崎奉行の司法的権限に迫った。また法の浸透過程と受容した長崎奉行所の法体系を見出し、判例集「犯科帳」から当時犯罪に関与した人間模様、裁判の実相を明らかにする。
関連書籍
キンセイナガサキシホウセイドノケンキュウ
近世長崎司法制度の研究
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体裁A5判・504頁
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刊行年月2010年01月
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ISBN978-4-7842-1477-8
内容
目次
序論
第一節 先行研究と問題提起
第二節 本書の構成
第一部 江戸幕府法の受容と長崎法の形成
第一章 長崎の法体系
第一節 幕府法と長崎法
行政法/司法/外交(貿易)/海防
第二節 長崎における司法的変遷
第一期/第二期/第三期/第四期
第二章 対外的法規の確立―長崎法と「国際法」―
第一節 対外的法規の形成と長崎法
第二節 長崎法の対外的法規への転換
第三節 幕府対外政策にみる「国際法」化
第三章 犯科帳と公事方御定書
第一節 犯科帳の史料学的研究
第二節 犯科帳と公事方御定書の法的効果
第四章 幕府評定所と長崎奉行の司法的概念
第一節 「江戸伺」システムにみる司法的秩序
第二節 幕府評定所と長崎奉行の量刑相違
第三節 正当防衛に関する認識―享保一〇年久左衛門・善兵衛の判決を事例に―
第四節 無礼討ちに関する認識―寛保元年服部忠七の判決を事例に―
第五節 敵討ちに関する認識―寛保二年喜三治・伝三郎の判決を事例に―
第二部 長崎奉行と司法機関
第五章 長崎奉行所関連機関と司法制度
第一節 警察機関
公的警察機関/自治的警察機関と私的警察機関/警察権の行使と実態
第二節 身柄拘束機関
牢屋/長崎の溜/諸預
補論 非常時の拘束機関の対応
第六章 長崎奉行の司法権
第一節 長崎奉行の司法的権限
第二節 司法管轄
国内犯罪の場合/対外的犯罪の場合
第三節 裁判制度
裁判規則/内済とその範囲/密告褒賞制と自訴
第四節 刑罰体系
長崎の刑罰/刑罰の変容と再考
第五節 公事方御定書制定以前の量刑相場
単一犯罪「殺人」の量刑相場/単一犯罪「傷害」の量刑相場/単一犯罪「盗み」の量刑相場/複合的犯罪(併合罪)の量刑相場
第六節 赦の種類と適用
終論
初出一覧/あとがき/索引(人名・事項)
紹介媒体
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長崎新聞
2010年2月14日
カルチャーサロン(文化面)
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『史学雑誌』第119編第12号
2010年12月20日
木村直樹
新刊紹介
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『日本歴史』第757号
2011年6月1日
小山幸伸
書評と紹介