著者・編者略歴

ゆのうえ・たかし…1949年鹿児島市生まれ。九州大学大学院文学研究科史学専攻博士課程中途退学。博士(文学、九州大学)。現在、静岡大学人文社会科学部教授。

内容

写経や法会、開板事業、偽文書など様々な事象を通して、個人や集団の宗教行為がいかなる社会性を持ったのか、中世の地域社会における、仏教と社会との関係性を明らかにする。
静岡県を中心とした地域の寺社文書の詳細紹介、紀行文から見る地域社会など、「宗教」と「地域社会」をキーワードとして古代から近代までの社会を概観する論集。
余篇として、幕末維新期、最後の世代の国学者小杉榲邨の活動についての論文を掲載。

目次

第一篇 地域社会と経典

第1章 平安時代の写経と法会―五部大乗経をめぐって―
  五部大乗経成立の歴史的前提/五部大乗経と法勝寺大乗会/五部大乗経と貴族社会

第2章 鎌倉期駿河府中の宗教世界
     ― 駿河国有度郡八幡神社旧蔵五部大乗経をめぐって―
  八幡神社旧蔵五部大乗経の復元/八幡神社旧蔵五部大乗経成立の概要/八幡神社旧蔵五部大乗経成立の背景

 補論1 駿河国有度郡八幡神社旧蔵大般若経

第3章 遠江国洞泉寺所蔵五部大乗経の成立と伝来
  形状/成立/伝来

第4章 美濃国薬王寺所蔵大般若経の開板と伝来
  形状と構成/開板の経緯と願主たち/伝来と活用

 補論2 伊豆国国柱命神社所蔵大般若経
 補論3 駿河国清見寺所蔵大般若経


第二篇 地域社会と寺社

第5章 覚海円成と伊豆国円成寺―鎌倉禅と女性をめぐって―
  覚海円成の周辺/覚海円成という女性/円成寺の開創と展開

第6章 中世仏教と地方社会―六十六部聖を手がかりとして―
  源頼朝の前世/六十六部聖と「六十六」という数字/六十六部聖の世紀

第7章 遠江国山名郡木原権現由来記の歴史的環境
 「由来記」と木原家所蔵文書/木原権現と神官木原氏/熊野三山と遠江国/「由来記」 の内容

第8章 中世後期の秋葉山と徳川家康
  秋葉寺別当光播と徳川家康/武士の秋葉信仰/秋葉寺と可睡斎

 補論4 駿河国東泉院と建穂寺―一通の高札写から―
 補論5 喜捨する人びと―駿河国心岳寺祠堂帳―


第三篇 地域社会の記憶

第9章 遠江久野氏の成立とその歴史的環境
  遠江久野氏の初見史料/久努から久野へ/久野氏初代宗仲/久野氏と原氏

第10章 旅日記・紀行文と地方社会
  鄙の長路/京へ田舎へ/東往西遊

第11章 名物瀬戸の染飯をめぐる文化史
  瀬戸の染飯の起源/近世紀行文にみえる瀬戸の染飯/狂歌に詠まれた瀬戸の染飯/描かれた瀬戸の染飯

第12章 近世後期神社祭祀をめぐる争論と偽文書
     ―遠江国榛原郡吉永村の場合―
  二通の「将軍足利義晴判物」/新出の今川義元判物/二通の「将軍義晴判物」作成の歴史的背景

余 篇
小杉榲邨の幕末・維新―近代化のなかの国学―
  阿波在住期の学問的環境/教部省入省/帝国博物館出仕以後

 補説 東京大学文学部附属古典講習科



あとがき
索引

紹介媒体

  • 『地方史研究』65巻4号

    2015年8月1日

    田中雅明

    新刊案内

  • 『日本史研究』650号

    2016年10月

    坂本亮太

    書評

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