天下人の神格化と天皇
定価
7,700 円(税込)
本体 7,000円
在庫状況: 在庫あり

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著者・編者略歴

のむら・げん…1976年大阪府生。2004年大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了、現在、防衛大学校人文社会科学群人間文化学科准教授
〔著書〕『日本近世国家の確立と天皇』(清文堂、2006年)『徳川家光―我等は固よりの将軍に候―』(ミネルヴァ書房、2013年)

内容

近世の政治史を考えるうえでの重要な問題の一つは、秀吉から家康に至るまでの間、彼らによる天皇の位置づけが変化していく中、今度はその天下人自身までもが神格化を遂げていたことであった。
 豊臣秀吉や徳川家康の神格化が、なぜ近世前期の政治過程において要請され、それらはどのように実現したのかを解明し、そこでの天皇・朝廷の行動と意味を再検討するとともに、その後の徳川将軍家が天下人の神格や天皇・朝廷といかに向き合ったのかを、綱吉期までを視野に入れ叙述する。

目次

序 論
幕藩制国家論のその後と日本中近世国家論
 「徳川国家」論の限界
 権門体制論と近世の天皇・朝廷
 「政治史」の発展的継承と本書の課題
 王権論に対する本書の立場

第一部 豊臣秀吉・徳川家康の神格化と天皇

第一章 慶長期初頭の政治情勢と豊国大明神
 豊臣秀吉の遺言変更をめぐって
 豊国大明神号の創出と後陽成天皇・豊臣家・徳川家康
 徳川家康の源氏改姓と豊国大明神

第二章 東照大権現号の創出と徳川秀忠
 徳川家康の久能山埋葬前後の状況
 久能山における神龍院梵舜の作法の歴史的位置
 天海の意見具申の内容と徳川秀忠による権現号奏請
 吉田家による対抗運動とその論理および限界
 徳川秀忠の国家構想と東照大権現号

第三章 徳川家光の国家構想と日光東照宮
 近世前期の神国思想をめぐって
 日光東照社大造替および『東照社縁起』真名本上巻作成と徳川家光
 『東照社縁起』追加作成と将軍権力
 東照社への宮号宣下と日光例幣使発遣奏請・決定の政治的背景
 徳川家康・秀忠の叙位任官文書再作成と東照宮号宣下との関連性
 東照宮号宣下の発案時期
 国家鎮護と徳川家光


第二部 身分集団としての禁中・公家中と江戸幕府

第一章 近世の堂上公家と身分制
 公家身分論をめぐる諸問題
 後陽成天皇・大御所徳川家康と公家の「外聞」―猪熊事件をめぐって
 秀忠・家光政権による公家の放埒行為への対処方針とその特質
 武家伝奏中院通茂の禁中・堂上公家論と家綱政権

第二章 領主としての公家と家綱政権
 延宝二年の山城国大洪水と同国紀伊郡石原村の公家領主
 延宝二年の公家領水損をめぐる幕府上方支配機構の対応


第三部 徳川将軍家の国家構想の継承と限界

第一章 天和・貞享期の綱吉政権と皇位
 天和期の皇位継承者選定過程と綱吉政権
 天和・貞享期の関白・京都所司代人事と徳川綱吉
 貞享期における霊元天皇譲位・大嘗会再興と綱吉政権

第二章 元禄・宝永期の徳川綱吉と「かけまくもかしこき日のもとの国」
 綱吉政権期における諸儀式・諸寺社等再興の特徴
 徳川綱吉・桂昌院による伊勢神宮・内侍所での祈禱とその目的
 徳川綱吉と東照大権現・日光東照宮
 元禄・宝永期における東山天皇の譲位問題と徳川綱吉

結 論

補 論
 書評 田中暁龍著『近世前期朝幕関係の研究』
 書評と紹介 藤田覚著『近世天皇論 近世天皇研究の意義と課題』


初出一覧/あとがき/索引

紹介媒体

  • 『ヒストリア』256号

    2016年6月

    石津裕之

    書評

  • 『日本史研究』643号

    2016年3月

    深谷克己

    書評

  • 『日本歴史』817号

    2016年6月

    田中暁龍

    書評と紹介

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