第23回日本比較文学会賞
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幕末外交儀礼の研究
欧米外交官たちの将軍拝謁
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体裁46判上製・432頁
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刊行年月2016年07月
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ISBN978-4-7842-1850-9
著者・編者略歴
さの・まゆこ…1969年東京生まれ.ケンブリッジ大学国際関係論専攻MPhil課程修了.東京大学博士(学術).現在,国際日本文化研究センター准教授.主な著書に『オールコックの江戸――初代英国公使が見た幕末日本』(中央公論新社、2003年)など.
内容
近代外交の夜明けは幕末に―。
日本と欧米の国との正式な外交関係は、安政4(1857)年、アメリカ総領事タウンセンド・ハリスの登城・将軍家定拝謁をもって幕を開けた。
本書が取り上げるのは、徳川幕府終焉まで計17例を数えた、欧米諸国の外交官による将軍拝謁。幕府は自らの儀礼伝統に則り、同時に西洋の慣習とも齟齬のない形で、その様式を完成させていた。
当時、対外関係の第一線にあった幕臣たちのその努力こそ、わが国が世界の舞台に立つための第一歩であった。政治交渉の過程とは異なる次元で展開した外交儀礼の形成過程は、従来の研究で見落とされてきた、もうひとつの幕末史である。
■担当編集者より■
将軍家定に拝謁するため江戸城に登ったさい、何度も何度もお茶をふるまわれた米国総領事タウンゼント・ハリス。こんなにお茶を飲んだらトイレに行きたくなってしまうのではないか。読んでいて心配になりました。
著者にうかがうと、案の定トイレに行ったのだとか。そしてハリスは本国への報告書に「江戸城のことを少しでも詳しく知るためにトイレに行った」と書いているそうです。
なんだかハリスってプライドが高そうです。(注:トイレのくだりは本書未収録)
本書には坂本龍馬も新選組も出てきません。主役は幕末に外交の最前線に立った江戸幕府の役人たちと欧米の外交官。なかでも、武家の伝統、欧米の流儀、異なる文化が接触する局面で双方が納得する外交儀礼を作り上げた幕臣たちの手腕と見識には目を見張るものがあります。
丁寧な叙述と多くの図版により、江戸城や大坂城での欧米外交官の将軍拝謁の様子が子細に浮かび上がります。ぜひご一読ください。
目次
序 章
Ⅰ 幕末外交儀礼の背景
第一章 徳川幕府の儀礼と対外関係
第一節 徳川幕府の殿中儀礼
第二節 朝鮮通信使迎接儀礼の実態
第三節 幕臣筒井政憲に見る外交経験の蓄積
第二章 欧米諸国の外交儀礼
第一節 外交実務に関する規範
第二節 非西洋地域への進出と儀礼観
Ⅱ 幕末外交儀礼の展開
第三章 アメリカ総領事ハリスの将軍拝謁(安政四年)
第一節 ハリス謁見の実現経緯
第二節 ハリス登城の一日(安政四年一〇月二一日)
第三節 まとめ―近世から近代への連続
第四章 試行錯誤
第一節 オランダ、ロシア代表の将軍拝謁(安政五年)
第二節 アメリカ公使ハリスの将軍再拝謁(安政六年)とその後
第三節 まとめ―持続可能な外交へ
第五章 儀礼様式の成立
第一節 「永世不易の禮典」に基づく展開
第二節 安定実施への到達
第三節 まとめ―外交儀礼の定着と空白の意義
第六章 四ヵ国代表の将軍慶喜拝謁(慶応三年)
第一節 背景と準備
第二節 当日の大坂城
第三節 その後の展開
第四節 まとめ―幕末外交儀礼の新展開
終 章 「対等外交」をもたらした幕末外交儀礼
参考文献目録
あとがき
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掲載図表一覧
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