時局による言論の制約、マルクス主義の流行、はたまた所属学会への配慮や、恩師・先輩への気遣いなど煩わしい人間関係……。
資料と向き合い、ひたすら真理を追究していると思われがちな人文学の研究者たちも、知らず知らずに社会のさまざまなものに拘束されている。
そんな学者たちの息苦しさの歴史を、科学史的に明らかにしようと企画された国際日本文化研究センターの共同研究「人文諸学の科学史的研究」の成果。
あなたもしばられていませんか?
■担当編集者より■
本書の内容、魅力の紹介については、編者の井上先生の「まえがき」をお読みいただければ知っていただけると思います(小社HPで公開しています)。
わたしからは本書を手にしないとわからない、ささやかな楽しみ方をお伝えします。
本書の執筆者紹介は、共同論集にしてはめずらしく、全員が顔写真つきで紹介されています。文章の印象と顔の印象が一致する人、しない人を、確認しながら読むことができます(そんなことをする必要はないですが)。そして、並び順は生年順。年功序列の慣習にしばられた並べ方にしました。生年が書かれている執筆者紹介はめずらしくありませんが、いざ順番に並べてみると、妙に納得したり、意外だったりするのはなぜでしょうか。
関連書籍
ガクモンヲシバルモノ
学問をしばるもの
-
体裁A5判並製・384頁
-
刊行年月2017年10月
-
ISBN978-4-7842-1898-1
内容
目次
第一部◆大日本帝国の時代から
論文 はたして言語学者はふがいないのか(長田俊樹)
―日本語系統論の一断面
論文 帝国大学の創設と日本型社会科学の形成(瀧井一博)
論文 天心の「子ども」たち(藤原貞朗)
―日本美術史の思想はどう継承されたのか
論考 「日本美術史」の形成と古都奈良・京都(高木博志)
論考 邪馬台国論争の超克(小路田泰直)
―白鳥・津田史学からの脱却
論考 特高警察と民衆宗教の物語(永岡 崇)
論考 日本人起源論研究をしばってきたものごと(斎藤成也)
第二部◆戦後の光景
論文 エポックメイキングな歴史書(玉木俊明)
―大塚久雄・越智武臣・川北稔の歴史学
論文 〈国文学史〉の振幅と二つの戦後 (荒木 浩)
―西洋・「世界文学」・風巻景次郎をめぐって
論文 民科とスターリン言語学(安田敏朗)
論考 中世史学史の点と線―石母田史学の挑戦(関 幸彦)
論考 戦後日本古代史学への雑考(若井敏明)
論考 学問への内外の規制―日本史学の場合(今谷 明)
幕 間────────────────────────
コラム 共同研究の支え―樋口謹一の仕事 (鶴見太郎)
コラム 「教育勅語」と「十戒」雑感(上村敏文)
コラム 角屋と桂離宮(井上章一)
コラム 真理と自由、そして学会(井上章一)
第三部◆戦後は明治をどうとらえたか
論文 学問を、国という枠からときはなつ(井上章一)
―アメリカのフランス革命、ソビエトの明治維新、そして桑原武夫がたどった途
対談 明治絶対王政説とは何だったのか(竹村民郎×井上章一)
論文 二〇世紀初頭、天皇主義サンディカリズムの相剋(竹村民郎)
―北一輝、大川周明、安岡正篤、永田鉄山の関係に留意して
第四部◆再録
論考 『つくられた桂離宮神話』より(井上章一)
論考 歴史はどこまで学統・学閥に左右されるのか (井上章一)
あとがき
研究会の記録
人名索引
執筆者紹介
関連リンク
編者・井上章一氏の「まえがき」をご覧いただけます
紹介媒体
-
「週刊読書人」
2018年1月12日
紹介(6面)
-
「京都新聞」
2018年3月12日
紹介(井上章一の現代洛中洛外もよう)
-
『日本歴史』2018年4月号(第839号)
2018年4月
新刊寸描