硫黄と銀の室町・戦国
定価
9,350 円(税込)
本体 8,500円
在庫状況: 品切

関連書籍

内容

14~17世紀の日本で採掘が進み、東アジア諸国に大量に輸出された「硫黄(サルファー)」と「銀(シルバー)」。その大量産出は、日本社会に新たなビジネスを生む一方で、アジアおよび世界の軍事・経済的な需要と結びついて、東アジア全体の貿易構造の転換をもたらした。

本書は、文献史学と考古学の研究成果を融合させ、分析化学の解析データも援用しながら、生産・流通・交易・消費といった様々な視点から、鉱業社会の長期的変遷を追究する。さらに鉱物資源の偏在に起因する人間の競合・奪取・独占の営みを念頭に、硫黄を征したサルファー大名(大友・島津)から銀を征したシルバー大名(毛利・豊臣・徳川)への覇権の移行を浮き彫りにする。

【担当編集者より】
第1部で論じられる世界システム論と接続するようなグローバルな話、第2部で論じられる出土したモノや遺跡に関わる話、そして第3部で論じられる産出地やそれに関わる産業、港と流通の話、本書では実に多様なスケールの議論が、硫黄と銀を切り口に展開されます。ミクロとマクロ、グローバルとローカルとはよく言いますが、物事を理解するにはそうした多様なスケールで見ることが重要であると教えてくれます。学際的共同研究の醍醐味が詰まった1冊です。

目次

序 中・近世日本の「硫黄」と「銀」をめぐる比較研究(鹿毛敏夫)

第一部 硫黄と銀の世界史

第一章 日本列島の硫黄とアジアにおける「硫黄の道」(山内晋次)
はじめに
一 日本列島産硫黄の対中国輸出の始まり
二 火山由来の硫黄と硫化鉱物由来の硫黄
三 11~13世紀における「硫黄の道」の形成
四 14~16世紀における「硫黄の道」の変化
五 博多港湾遺構発見の硫黄塊が提起する問題
おわりに

第二章 銀の島日本に関する情報をめぐって―スペイン・ポルトガルのアジア戦略―(岡美穂子)             
はじめに
一 ポルトガル人のアジア進出と交易の時代
二 ポルトガル人の日本初来航と銀
三 フィリピン諸島のスペイン人と「銀の島」
おわりに

第三章 近世初期東アジア海域間の硫黄貿易(李侑儒) 
はじめに
一 16世紀半ば以前の中国と東アジア海域
二 16世紀後半の朝鮮・日本・明朝と東アジア海域―禁制と密貿易をめぐる―   
三 17世紀、壬辰戦争後の北東アジア海域
四 17世紀半ば、明清交替後の東アジア海域
おわりに

第四章 中国明代における銀の貨幣化―その全体的視野―(万明、岩本真利絵訳)
はじめに
一 明代における銀の貨幣化の過程についての考察
二 銀の貨幣化―明朝中国と世界の相互影響―
おわりに

[コラム] ゴールドラッシュと中国人―金・錫の砂鉱床採掘と近代華僑―(園田節子)
はじめに
1 グローバルな歴史現象としてのゴールドラッシュ
2 北米の金採掘と中国人の関わり
3 英領マラヤにおける華僑の錫採鉱
おわりに



第二部 硫黄山・銀山の考古学

第一章 石見銀山遺跡における発掘調査研究の成果(遠藤浩巳)
はじめに
一 石見銀山遺跡の全体像
二 発掘調査研究による鉱山町と銀生産の様相
三 石見銀山遺跡の整備活用事業
おわりに

第二章 博多遺跡群出土の中世初頭の硫黄(大庭康時)
はじめに
一 硫黄の出土状況
二 出土硫黄について
三 出土の歴史的背景
おわりに

第三章 堺環濠都市遺跡から出土した硫黄(續伸一郎)
はじめに
一 硫黄の出土状況
二 周辺の調査・研究から
三 出土した硫黄の科学分析と産地同定
四 出土したメナムノイ窯四耳壺
五 豊後大友府内と堺との関係
おわりに

[コラム] 硫黄の中世都市 豊後府内(府中)―積み出し港津をめぐる諸問題―(坪根伸也)
はじめに
1 中世前期の港湾「勢家津」
2 戦国時代末期の港湾「沖浜」
3 「沖浜」海没と「瓜生島」
4 「府内古図」に描かれた沖浜
5 「沖浜」の所在地
6 「沖浜」の範囲
7 「沖浜」推定地周辺の発掘調査
おわりに



第三部 サルファーラッシュ・シルバーラッシュの産地と社会構造

第一章 サルファーからシルバーへの時代転換(鹿毛敏夫)
はじめに
一 室町・戦国~近世期日本の硫黄産業
二 銀山発見による遣明船貿易の開始
三 計量社会の拡大と衡量制政策
四 東南アジア銀の輸入
おわりに

[コラム] 大友氏400年の歴史と豊後硫黄(広津留三紗)
はじめに
1 鎌倉時代の大友氏
2 室町時代の大友氏
3 戦国時代の大友氏
おわりに

第二章 『戊子入明記』と「硫黄の道」(伊藤幸司)
はじめに
一 海を渡る「石硫黄」
二 博多湾の硫黄
三 九州西岸の港町と硫黄
四 関門海峡の港町と硫黄
おわりに

第三章 16世紀東アジア海域の軍需品貿易―硝石・硫黄・鉛―(中島楽章)
はじめに
一 15世紀以前の東部アジア火薬貿易
二 16世紀初頭、海域アジアの火薬貿易
三 後期倭寇と東・南シナ海域の火薬貿易
四 「1570年システム」と軍需品貿易
五 考古資料が示す16世紀末の弾薬貿易
六 朝鮮侵略と軍需品貿易
七 日本における硝石の国産化と輸出
おわりに

第四章 近世初期石見銀の産地と産業(仲野義文)
はじめに
一 徳川家康による石見銀山の直轄化
二 大久保長安の支配と御直山制の確立
三 吹屋の直営化と水かねながし
四 近世初期の銀流通と灰吹屋
おわりに


あとがき
索引(人名・事項)
執筆者紹介

紹介媒体

  • 『日本歴史』第890号

    2022年7月

    川戸貴史

    書評

関連書籍

  • このエントリーをはてなブックマークに追加