刺繡の近代
定価
8,250 円(税込)
本体 7,500円
在庫状況: 在庫あり

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著者・編者略歴

まつばら・ふみ

内容

近代の刺繡は海外への輸出という役割を担ったことで、制作体制や意匠、技術が大きく変化した。西洋の室内を装飾するため、それまでにない形・絵柄・表現力が求められ、商人・職人らにより超絶技巧ともよべる作品の数々が生み出される。

国内外の王宮をも飾る日本の近代刺繡が花開いたおよそ50年間について、現存する作品を網羅的に調査することで、刺繡産業の状況を具体的に描き出し、日欧間でどのような影響を与えあったのかを明らかにする。


【担当編集者より】
輸出用かつ布製の生活用品という性格から、国内にあまり現物が残らなかった近代刺繡。それを追いかけて海外へと調査に出かけた著者の行動力と情熱が詰まった研究成果です。
イギリス、フランス、ドイツ、オーストリア、スイス、スペイン、チェコ、ハンガリー、etc...とヨーロッパ中を巡る調査の結果、日本からどのようなルートで西洋に渡り、どのように売られていったのか、実際の作品(ときには王室に収められた大作、またときには極小さな端切れまで)はもちろん、聞き取りや刺繡作品が描かれた絵画など、国内外の様々な資料を博捜しながら、近代刺繡産業の成り立ちと興隆、衰退の様子、そして何よりその魅力を、まざまざと描き出しています。

目次

はじめに

第一章 刺繡史の中の近代
 第一節 刺繡史概観
 第二節 江戸から明治へ――刺繡貿易の萌芽
 第三節 刺繡界を取り巻く社会背景
 第四節 近代刺繡の特徴
 第五節 国内に残る近代刺繡コレクション

第二章 輸出刺繡の諸相
 第一節 輸出刺繡 その初めと終わり
 第二節 作品の変遷
 第三節 販路・受容層――誰にどのようにして渡っていったのか

第三章 近代刺繡の担い手――分業が生み出した近代の刺繡
 第一節 制作体制
 第二節 商人――作品のプロデューサー
 第三節 絵師――芸術性の担保
 第四節 職人――超絶技巧の担い手
 第五節 職人の育成――新たなる職能教育の形

第四章 欧州に残る日本刺繡コレクション
 第一節 欧州に残る日本コレクションの現状
 第二節 コレクション形成の経緯
 第三節 コレクションからうかがえる二次流通
 第四節 欧州における受容の様子とその背景

付論 トルコに残る日本の刺繡
 第一節 トルコ宮殿を彩る日本の刺繡
 第二節 隠れた名品――ベイレルベイ離宮を彩る獅子図刺繡額
 第三節 オスマン帝国への道――トルコ国立宮殿局所蔵刺繡コレクションの特徴と航路
 
第五章 描かれた刺繡
 第一節 ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの作品に見る屛風
 第二節 エドゥアール・マネの作品に見る屛風と壁掛
 第三節 フランセスク・マスリエラの作品に見るクッションと屛風
 第四節 アンナ・アルマ=タデマの作品に見る窓掛
 第五節 ヴォイチェフ・ヒナイスの作品に見る屛風
 第六節 エドワール・ドゥバ・ポンサンの作品に見る壁掛とホセ・ピノスの作品に見る屛風
 第七節 ヘオルヘ・ヘンドリック・ブレイトネルの作品に見る屛風

第六章 刺繡作品に見る日欧交流
 第一節 髙島屋写真帖図案に見る日欧交流の一形態
 第二節 西洋人の好んだ意匠
 第三節 屛風表装の形状に見る日欧交流
 第四節 日本刺繡の影響――海外における模倣例

終章


謝辞
初出一覧
参考文献一覧

資料1 国内外刺繡コレクション 調査結果
資料2 刺繡作品一覧
資料3 近代刺繡家列伝
資料4 聞き取り調査記録
資料5 刺繡関連年表

収録図表一覧




紹介媒体

  • 『京都新聞』2021年7月22日付 文化面

    2021年7月22日

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