著者・編者略歴

いながき ひろあき・・・1967年東京都生まれ。筑波大学人文学類卒業。同大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得。北九州市立小倉城庭園博物館学芸員。表千家北山会館企画室などの勤務を経て、2008年4月より、松江市歴史資料館整備室学芸員。専攻は日本文化史。

内容

蹴鞠は、前近代の日本にあっては、今日一般に想像されるよりも、比較的広範に行われていた芸能文化・スポーツであった。本書は、これまであまり顧みられることがなかった、室町期以降の蹴鞠会の挙行形態の歴史を体系的に論じた一書。とくに応仁・文明の大乱後の15世紀後半における蹴鞠会について、新興武家層を参会者として加えた場でより遊興性を加味しながら変容し、「故実」に代わって「新儀」が定着すること、それが近世の家元制度の萌芽と認められることなどを明らかにした。

目次

序論 蹴鞠研究の回顧と本論の課題

第一章 平安~南北朝期の蹴鞠―晴の蹴鞠会の系譜―
第一節 小 序
第二節 平安末期~鎌倉初期の晴会
(1)承暦四年の内裏鞠会(2) 安元二年の法住寺殿の鞠会(3)承元二年の大炊殿の鞠会(4)承元五年の「韈の程品」
(5)建暦三年の高陽院行幸鞠会
第三節  鎌倉後期~南北朝期の晴会
(1) 弘長二年の主上・上皇鞠会(2) 弘安八年の北山准后九十御賀の鞠会(3)正和四年の長講堂の鞠会(4)貞治二年の内裏鞠会
第四節 小 括     

第二章  室町期の蹴鞠―天皇・室町殿臨席の晴会-    
第一節 小 序
第二節 天皇・室町殿臨席晴会の基準型
第三節 天皇・室町殿臨席晴会の比較検討
(1)永徳元年の鞠会(2)応永二年の鞠会(3)応永十五年の鞠会(4)永享九年の鞠会(5)享徳二年の鞠会
第四節  天皇・室町殿臨席晴会の性格
第五節  天皇・室町殿臨席晴会の消失
第六節  小 括

第三章  戦国期初頭の蹴鞠―応仁・文明~明応期の蹴鞠会―                       
第一節 小序
第二節 文明前期の蹴鞠会
(1)内裏(室町殿仮宮)の鞠会(2)室町殿の鞠会(3)殿上無名門前の鞠会
第三節  文明後期の蹴鞠
(1)禁裏(勝仁親王御方)の鞠会(2)室町殿の鞠会(3)公家・武家の私邸における鞠会(4)堺における鞠会
第四節 長享・延徳・明応期の蹴鞠会
(1)禁裏(勝仁親王御方)の鞠会(2)公家・武家の私邸における鞠会
第五節 小 括

第四章  戦国期中葉の蹴鞠―永正・天文期の蹴鞠会とその様式―              
第一節 小 序
第二節 『蹴鞠百首和歌』の成立と背景
(1)『蹴鞠百首和歌』の研究史(2)「故実」と「新儀」(3)二楽軒(飛鳥井)宋世の立場(4)『蹴鞠百首和歌』の位置付け
第三節 天文七年の飛鳥井雅綱邸蹴鞠会
(1)蹴鞠会の記録(2)蹴鞠会の意義(3)鞠場の配置と参会者(4)蹴鞠会の挙行形態と装束(5)蹴鞠会にみる公家社会の重層性
第四節 小 括

第五章 蹴鞠家元制度成立史論―蹴鞠遊芸化の前提―                   
第一節 小 序
第二節 蹴鞠遊芸化の萌芽
第三節 蹴鞠遊芸化の前提
第四節  小 括
結論 本論の成果と残された課題

あとがき
索引(人名・事項・文献史料名)

紹介媒体

  • 『日本歴史』第730号

    2009年3月1日

    渡辺融

    書評と紹介

  • 『史学雑誌』118編3号

    2009年3月20日

    辻浩和

    書評

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