うえだ・ひさお…一九七八年奈良県生、二〇〇二年立命館大学大学院文学研究科博士前期課程修了、二〇〇八年大阪大学大学院文学研究会博士後期課程修了。現在、日本学術振興会特別研究員、博士(文学)。
関連書籍
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幕末維新期の陵墓と社会
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体裁A5判・400頁
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刊行年月2012年03月
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ISBN978-4-7842-1604-8
著者・編者略歴
内容
畿内に広く散在する陵墓(天皇・皇族の墓)は、幕末維新期の政治変動を受け、大きくその性格を変えていく。
本書では、陵墓に政治的意味を付与し、祭祀を行おうとする政治権力(朝廷・山陵奉行)と在地社会の軋轢・葛藤が最も明確に現れた陵墓管理・祭祀に注目する。
分析にあたっては、近世・天保期・文久期・維新期のそれぞれの段階差に十分留意し、とりわけ文久~慶応期の画期性を恒常的な陵墓管理制度と皇霊祭祀が始められたことに求め、陵墓管理・祭祀がもたらされた村・地域社会の側の動向を国毎の違いを明確にしつつ、管理を担った人々の内在的論理に即して検討。
社会における天皇の位置づけや天皇認識を町・村社会の具体的なレベルから広範囲かつ実態的に描き出し、幕末の天皇・朝廷と社会の関係を解明する。
目次
序 章
近世天皇・朝廷論の展開と課題/近世~維新期の陵墓をめぐる先行研究とその問題点/本書の視角と課題
■ 第一部 陵墓管理制度・祭祀の形成過程 ■
第一章 幕末維新期の陵墓・皇霊祭祀の形成
近世天皇家の先祖祭祀と天皇陵の様相/徳川斉昭の修陵建議/文久の修陵と皇霊祭祀の創出/維新後の皇霊祭祀の整備
第二章 幕末期の陵墓考証とその「政治化」
―― 谷森善臣と疋田棟隆 ――
嘉永~安政期の陵墓考証・探索と京都の山陵考証家/文久の修陵と考証方の構成/疋田棟隆『山陵外史徴按』と谷森善臣の反駁/「一己之存意」から朝廷の治定へ
第三章 幕末期における陵墓管理制度の形成
文久の修陵の性格/長・守戸の設置/修陵・管理に対する在地社会の動向/陵墓管理者の身分問題
第四章 維新期陵墓政策の特質と展開
明治諸陵寮の組織と政策課題/陵墓管理制度の改革
■ 第二部 陵墓管理・祭祀と村・地域社会 ■
第一章 陵墓管理・祭祀と村社会
―― 大和・飯豊天皇陵を中心に ――
近世の三歳山と氏子村々/文久の修陵と郷宮の移転/陵墓管理・祭祀の様相
第二章 「聖域」の形成
―― 南都・開化天皇陵を中心に ――
近世の開化天皇陵と念仏寺/文久の修陵/陵墓管理をめぐる動向/維新後の開化天皇陵と神仏分離
第三章 陵墓管理と地域社会
―― 山陵奉行用達と守戸組合 ――
山陵普請入用と献金・融通/山陵奉行用達米田新五左衛門/長・守戸の身分問題と守戸組合/陵墓管理・守戸組合と村・地域社会
第四章 朝廷権威と在地社会
―― 山城国の陵墓を素材に ――
山城における修陵・管理の特質/崇光天皇陵の管理と吉村家
第五章 近世社会における天皇・朝廷権威とその解体
―― 河内国石川郡叡福寺を中心に ――
近世叡福寺の組織と運営/天皇・朝廷権威の獲得と活用/近世的天皇・朝廷権威の解体と叡福寺
終 章
あとがき
索引(人名・事項)
紹介媒体
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『日本歴史』778号
2013年3月
外池昇(成城大学文芸学部教授)
書評と紹介
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『日本史研究』612号
2013年8月
鍛治宏介(京都学園大学人間文化学部)
書評
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『歴史学研究』934号
2015年8月
井上智勝
書評