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識字と学びの社会史

日本におけるリテラシーの諸相

大戸安弘 編

八鍬友広 編

  • 体裁
    A5判上製・372頁
  • 刊行年月
    2014年10月
  • ISBN
    978-4-7842-1772-4 C3037

内容

近世日本の識字率は、世界的に高い水準であったということが、研究者の間でも、ある種の定説のように受けとめられているようである。しかし、本当にそうなのだろうか――。
本書では、近代学校制度が導入される以前までの、日本の識字と学びの歴史的展開とその諸相を、様々な史料から多面的に掘り起こし、実証的な検討を試みる。
地域性と個別性を意識した事例の検証が必ずしも十分とはいえない現状に一石を投じる、教育史研究者七名による気鋭の論文集。

目次

序 論            大戸安弘(横浜国立大学教育人間科学部教授)
                八鍬友広(東北大学大学院教育学研究科教授)

1 前近代日本における識字率推定をめぐる方法論的検討
                        木村政伸(新潟大学教育学部教授)
「識字」とは何か/文献資料からの推定/寺子屋への就学率からの推定/署名による識字率の推定/おわりに

2 「一文不通」の平安貴族
                鈴木理恵(広島大学大学院教育学研究科教授)
読み書き能力不足の貴族/参議の定文執筆能力/平安後期の貴族社会と文字

3 一向一揆を支えたもの
  ―一向宗門徒の学習過程を中心として              大戸安弘
道場における学習の成立/宗教的信念の確立

4 キリシタンの信仰を支えた文字文化と口頭伝承
                                        木村政伸
浦上崩れと天草崩れ/キリスト教布教期の民衆と文字文化/キリシタン信仰と共同体/禁教下における信仰の継承とオラショ

5 近世農民の自署花押と識字に関する一考察
  ―中世末期~近世初期、近江国『葛川明王院史料』を中心として
                       梅村佳代(奈良教育大学名誉教授)
一四世紀(正和~元応期)、農民の自署花押・略押の検討/一六~一七世紀(天文・天正~慶長期)、農民の自署花押・略押の検討/一七世紀前半(元和~慶安期)、農民の自署花押・略押の検討/一七世紀後半(延宝~正徳期)、農民の自署花押・略押の検討

6 越前・若狭地域における近世初期の識字状況         八鍬友広
民衆の花押と識字/越前・若狭地域の教育状況/越前・若狭地域の民衆花押/岩本村の地域特性/岩本村における流暢に筆を使う人々

7 「継声館日記」にみる郷学「継声館」の教育
  ―近世会津地方における在郷商人の教育意識
                     太田素子(和光大学現代人間学部教授)
近世の会津高田町と田中文庫所蔵史料について/会津藩の教学政策と郷学「継声館」/教師としての田中慶名・重好について/「継声館日記」の概要と「継声館」教育の特質/学校の生活指導について/日記下巻にみる私塾「継声館」の足跡/入門生徒の背景

8 武蔵国増上寺領王禅寺村における識字状況
  ―寛政・文化期村方騒動を通して                 大戸安弘
寛政・文化期王禅寺村における村方騒動の概要/王禅寺村村民の識字等をめぐる基礎的状況

9 明治初年の識字状況
  ―和歌山県の事例を中心として
                      川村 肇(獨協大学国際教養学部教授)
明治初年の識字状況に関する先行研究/和歌山県の識字資料/和歌山県識字調査の分析


あとがき
執筆者紹介
索引(人名・事項・書名・地名)

紹介媒体

  • 『教育学研究』82巻3号

    2015年9月

    山梨あや

    書評

  • 『日本歴史』810号

    2015年11月1日

    辻本雅史

    書評と紹介

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