どい ひろつぐ…1972年大阪市生。神戸大学文学部史学科東洋史学専攻卒業、同大学院文学研究科(修士課程)を経て、文化学研究科(博士課程)修了、博士(学術)。現在、熊本学園大学外国語学部准教授。専門は朝鮮農業史。
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植民地朝鮮の勧農政策
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体裁A5判上製・448頁
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刊行年月2018年08月
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ISBN978-4-7842-1948-3
著者・編者略歴
内容
近代日本の農業政策は、明治・大正期に農業生産力の向上を達成し、工業の飛躍的発展に大きく貢献した。一方この時期は日本が帝国主義の道を歩みだした時期でもあり、植民地化した朝鮮でも、農業生産力の着実な向上が見られた。日本から始まった勧農政策は、どのように朝鮮に移植され、独自の発展を遂げたのか。
本書は、日露戦争から世界恐慌までの時期を対象とし、保護国期・植民地期における朝鮮の勧農政策の形成・展開過程を解明することによって、近年議論が硬直化しがちな朝鮮植民地農政の再検討を試みる。技術普及と人材育成という勧農政策の視点から照射することを通して、朝鮮の植民地農政を近代農学の導入・定着過程として新たに描き直す。
【担当編集者より】
若き日に大陸で勧農政策に携わっていたという義祖父が亡くなったとき、慣れない異国での生活の辛さや現地の人々との思い出を綴った文章が出てきました。
本書では、本田幸介や酒匂常明ら、今まであまり取り上げられてこなかった農政官僚・農学者たちの功績にも迫ります。著者は歴史学の出身ですが農学も積極的に学んでおり、新たな視点で歴史の再検討に挑みます。
目次
序章 近代日本の勧農政策と植民地朝鮮
第一節 本書のねらい
第二節 勧農政策の形成
第三節 勧農政策の展開
第四節 朝鮮植民地農政の再検討
【第一部 植民地朝鮮における勧農政策の形成―一九一〇年代】
第一章 併合前後期の朝鮮における勧農機構の移植過程
第一節 農学者本田幸介と朝鮮
第二節 酒勾常明の朝鮮農業認識―移住地としての朝鮮
第三節 吉川祐輝の朝鮮農業認識
第四節 「韓国土地農産調査」と勧農機関設置構想
第五節 農事試験研究機関の開設
第六節 農業教育機関の開設
第七節 農業団体の設置―韓国中央農会
第二章 朝鮮における勧農政策の本格的開始
第一節 併合前後期における勧農方針の確立
第二節 農事改良の開始―米を中心に
第三節 勧農機構の整備
第三章 朝鮮における普通学校の農業科と勧農政策
第一節 農業科の普及
第二節 農業科の内容―学校内での農業教育
第三節 勧農機関としての普通学校―学校外での農業教育
第四節 植民地農政の「担い手」育成のはじまり
第五節 簡易農業学校の設置―朝鮮の実業補習学校前史
【第二部 植民地朝鮮における勧農政策の展開―一九二〇年代】
第四章 朝鮮農会令制定と勧農政策
第一節 勧農政策の転換―朝鮮農会令立案審議の開始
第二節 産業調査委員会の開催
第三節 「産米増殖計画」更新と朝鮮農会令
第四節 朝鮮における系統農会の成立
第五節 朝鮮農会の組織と事業
第六節 一九二〇年代の勧農機関の動向
第五章 「産米増殖計画」と農業教育の再構築
第一節 三・一独立運動の衝撃
第二節 第二次朝鮮教育令における普通学校農業科
第三節 普通学校農業科の継続と変化―一九二〇年代前半
第四節 農業教育の再構築―普通学校と実業補習学校
第五節 日本内地の実業補習学校制度の導入
第六節 植民地農政の「担い手」育成過程の整備
第六章 地域社会における植民地農政の「担い手」育成
第一節 江原道における農業教育
第二節 「更新計画」下における実業補習学校の拡充
第三節 普通学校における職業科の新設
第四節 京畿道における卒業生指導制度の開始
小 括
終章 朝鮮植民地農政の確立
第一節 勧農政策の特徴
第二節 勧農機関のその後
初出一覧/あとがき/関連年表/索引
紹介媒体
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「農業共済新聞」2018年9月2週号(第3237号)
2018年9月12日
新刊紹介
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『日本歴史』第855号
2019年8月1日
松本武祝
書評と紹介