好評につき2刷(2019年4月)
ニワトケンチクノセンチャブンカ
庭と建築の煎茶文化
近代数寄空間をよみとく
-
体裁A5判上製・352頁
-
刊行年月2019年01月
-
ISBN978-4-7842-1944-5
内容
煎茶の流行、茶の湯(抹茶)の復興―
近代茶道界はまさに煎茶・抹茶がせめぎ合い、そして融合する時代であった。
それゆえ、煎茶に興じた数寄者たちの好みや背後にある煎茶文化をふまえなければ近代数寄空間(庭・建築)は理解できない。大正以降、茶の湯の流行とともに煎茶文化そのものは陰に隠れても、庭・建築に取り入れられた煎茶的な趣向は、茶の湯の世界と融合し、新たな近代数寄空間を形成していったからである。
これまで茶の湯の視座からのみ語られてきた近代数寄空間を煎茶的要素からよみとき、新たな解釈を提示する。
【担当編集より】
「茶室は抹茶を嗜むための空間だ」と考える人は多いと思います。ところが近代に生まれた数寄空間には抹茶に向かないものが結構あるそうです。常識から外れたものは「例外」として片づけられてしまいがちですが、尼﨑先生をはじめとした研究グループは、それと正面から向き合った結果、その違和感を解くカギが「煎茶文化」であることを突き止めます。
学術書の編集者をしていて面白いのは、常識をひっくり返す研究成果に出会うときです。本書はまさにそういう体験をした1冊でした。
目次
煎茶文化の統合―序にかえて(熊倉功夫)
Ⅰ近代数寄空間と煎茶趣味
近代庭園の空間的特質と煎茶(尼﨑博正)
煎茶の場と環境(矢ヶ崎善太郎)
煎茶席の意匠的特質(麓和善)
【コラム1】植治と箒庵と有朋(尼﨑博正)
【コラム2】小川可進―初代後楽(六世 小川後楽)
Ⅱ煎茶流行の時代
煎茶文化(六世 小川後楽)
補論 煎茶の庭―その希求する源的世界―(六世
小川後楽)
文人煎茶の庭(霊鷲照石)
煎茶席と近代和風住宅(麓和善)
近代数寄者の煎茶と文人趣味(矢ヶ崎善太郎)
明治のニッポンにて、外国人がであった「cha no yu」と庭園(武藤夕佳里)
【コラム3】山紫水明処(頼純子)
【コラム4】甦る煎茶席―草野家・中津万象園(七世 小川後楽)
Ⅲ煎茶趣味の広がり
煎茶席の歴史的・地域的特質(麓和善)
各地の煎茶文化―その伝播の要因および経路(六世 小川後楽)
煎茶文化の伝播と普及(矢ヶ崎善太郎)
【コラム5】渉成園の四方の門―西門から入園した頼山陽(加藤友規)
特論 「煎茶」の思想的・政治的景観(六世 小川後楽)
終章 近代数寄空間の特質-煎茶と抹茶の融合(尼﨑博正)
あとがき(尼﨑博正)
付録 煎茶的要素を含む数寄空間一覧
索引(人名、庭園・建築名)
執筆者紹介
紹介媒体
-
「読売新聞」中部版
2018年10月14日
「探訪 東海百城」編著者 麓先生インタビュー
-
『史迹と美術』892号
2019年2月28日
加藤繁生
書評
-
『庭』第235号
2019年5月1日
「NIWA BOOK」
-
『ランドスケープ研究』84巻2号
2020年
関西剛康
「庭園史:深化する庭園研究」内で紹介
-
『茶の湯文化学』36号
2021年9月25日
神谷昇司
書評