近世藩医の学問と医療環境
定価
7,150 円(税込)
本体 6,500円
在庫状況: 未刊

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著者・編者略歴

1972年、大阪府生まれ。住友史料館副館長。2003年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。主要著書:『近世医療の社会史 知識・技術・情報』(吉川弘文館、2007年)、『江戸時代の医師修業 学問・学統・遊学』(吉川弘文館、2014年)、『究理堂所蔵 京都小石家来簡集』(共編、思文閣出版、2017年)、『洋学史研究事典』(共編、思文閣出版、2021年、第34回矢数医史学賞受賞)

内容

近世は、ごく普通の人びとのあいだでも「病にかかったら医師に診てもらう」という考えが浸透していった時代である。しかしこの時代、公儀=幕府・藩は医療知識の獲得、社会への普及・提供に積極的な役割を果たすことはなく、社会全体を視野に入れた医療システムは、ついに構築されなかった。そうしたなかで、医学の発展を主導したのは、藩医身分の者たちだった。
そこで本書は藩医たちに焦点を定め、その身分=生業の特質、知識や技術の獲得・継承と社会への普及のありようを明らかにし、さらにその実態が近代の医療制度をいかに規定し、継承されたかを論じる。

目次

序 章
 一 藩医層が主導した近世医学
 二 知識・技術の継承過程とその特質
 三 近代医制を準備した医療環境の成熟

第Ⅰ部 藩医の身分と職分

第一章 知識・技術の所有と身分
 はじめに
 一 藩医身分の存在形態
 二 領内医師の再生産過程
 三 知識・技術の所有をめぐって
 おわりに

第二章 藩医の職分とは何か─伊勢崎藩医の事例から
 はじめに
 一 伊勢崎藩医中の位地
 二 藩医栗原氏の医療
 三 伊勢崎地方における医療環境の前提
 おわりに

第三章 江戸の眼病療治─福岡藩医田原養卜「眼目療治帳」を素材として
 はじめに
 一 天保三年「眼目療治帳」の構成
 二 江戸藩邸社会の医療需要
 三 都市社会に向けた眼科療治の実現
 おわりに

第Ⅱ部 近世の医学教育と医療環境

第四章 地方藩医の身分存立と学統─米沢藩伊東家の事例から
 はじめに
 一 眼科医家里周悦の願書
 二 眼科諸流の秘伝性
 三 米沢藩医伊東家の系譜
 四 医家相続の要件
 おわりに

第五章 江戸時代の医学教育─米沢藩の事例から
 はじめに
 一 有壁家「当門下之法則」
 二 上杉鷹山時代の医制整備
 三 米沢と江戸の学問交流
 四 医学教育機関「好生堂」の教育
 五 水野家文書「杏陰日録」にみる江戸遊学
 六 幕末期有壁家の江戸詰御用と学問修業
 おわりに

第六章 鳥取藩在村の医療環境─嘉永・安政期「在方諸事控」を素材として
 はじめに
 一 鳥取藩領の医制
 二 藩医「内弟子」という存在
 三 医師「在入」の実態
 四 他国医師の活動
 五 安政六年のコレラ流行
 六 廻村種痘の展開
 おわりに

第Ⅲ部 近世近代移行期の医療環境

第七章 医療環境の近代化過程─維新期の越前国府中を事例として
 はじめに
 一 維新期における府中医師の活動
 二 思精館から武生枝病院へ
 おわりに

第八章 明治初期新川県の医療環境
 はじめに
 一 医務取締の任命
 二 伺書と新川県の回答
 三 領内医療従事者の掌握
 四 新川県の種痘奨励
 五 石川県時代の医療環境
 おわりに

第九章 近代医制の成立と漢方医─服部甫庵の事績をめぐって
 はじめに
 一 甫庵の就学履歴
 二 佐野における医療活動
 三 服部家の相続と学問
 四 維新期以降の甫庵
 おわりに

終 章
 一 近世の医療環境を担った主体について
 二 近世の学統と医学教育機関について
 三 明治初期医療史研究の可能性について

初出一覧/あとがき/索引

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