水系都市京都
定価
5,940 円(税込)
本体 5,400円
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著者・編者略歴

おの・よしろう…1957年生。京都大学大学院工学研究科衛生工学専攻修士課程修了。博士(京都大学・工学)。京都大学工学部講師、岡山大学大学院環境学研究科教授を経て、現在、京都工芸繊維大学副学長・教授。

内容

 都市経営の重要な要素のひとつが、利水・治水を含めた水の制御である。豊富な地下水により清涼な飲料水を得てきた京都は「山紫水明」の地とたたえられる。しかしその美名とは裏腹に、灌漑・防火用の表流水の欠乏に古来悩まされつづけた都市であった。そして明治23年に竣工した琵琶湖疏水こそ、この問題を解決し、その都市構造さえ変えてしまう画期的な事業だった。
 近代京都の都市史を水量・水質・水利権に着目して水インフラという視点から論じるとともに、同一水系に属する伏見が一度は独立市制を志しながら京都市へ合併される顚末を明らかにする。

目次

はじめに

■ 第Ⅰ部 防火都市・農業都市の京都 ■

第一章  京都・御所用水の近代化
一 近世までの京の水支配
二 琵琶湖疎水工事の目的
三 明治四年以降の御所用水
水の支配の変遷/用水絶水と水番役/旱魃時の対応と用水の汚濁
四 琵琶湖疏水竣工後の御所用水
疏水の竣工/御苑外の水路工事/灌漑用水/御用水欠乏事件

第二章  都市経営における琵琶湖疏水の意義
一 琵琶湖疏水の開削
二 琵琶湖疏水建設のための土地収用
鴨東における疏水線路/疏水線路の土地の買上/まとめ
三 鴨川東部における疏水本線沿線の水力利用
資料の検証―水車動力の実態に関して/鴨川東部・船溜周辺の水力利用産業の盛衰/まとめ
四 庭園と防火 
既往研究の成果/本論で扱った資料/水力使用の実態と庭園群の出現/まとめ

第三章  水道インフラ整備
一 コレラ流行と祇園祭
井戸水水質/博覧会と祇園祭
二 琵琶湖第二疏水
上水道か下水道か/京都策二大事業/京都市三大事業
三 御所水道


■ 第Ⅱ部 大京都への都市拡大と伏見編入 ■

第一章  栄光の伏見
一 伏見の概要
二 伏見からみた京伏合併―第Ⅱ部の主題
三 京伏合併理由の定説に関する論点整理

第二章  大京都市構想と大伏見市構想
一 都市計画事業概説
二 京都市の都市計画と伏見の位置づけ
三 編入圧力と独立市制施行
四 浜田案提示と伏見独立市制
五 宇治川派流埋立工事問題

第三章  伏見市制の挫折と京都市への編入プロセス
一 伏見市制の論理―中野種一郎の施策の検証
二 京都府・市の論理―佐上信一の合併推進論

結章

資料編


初出一覧/あとがき/索引

紹介媒体

  • 『水環境学会誌』39巻3号

    2016年1月10日

    西村文武

    新刊紹介

  • 『ヒストリア』258号

    2016年10月

    藤田裕介

    新刊紹介

  • 『日本史研究』652号

    2016年12月

    林倫子

    書評

  • 『人文地理』第67巻第5号

    2015年

    吉越昭久

    書評

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